デリバリー物語《第11話 A》

「離れてよっ!!」
そう言うと雫は僕を突き飛ばす。
「おいっ!何やってんだよ!!てか、僕はちゃんと雫との結婚考えてるし……今だって同棲続けてるじゃないか。この形は二人で話し合った結果だろ!」
 近寄れば今にも盥の熱湯を被りそうな彼女に向かい、何とか落ち着いてもらえるよう話しかける。勿論、言っていることは本心だ。
……いや、本心か?
「嘘。本当はカエデさんの方がいいんでしょ。」
 カエデ……塚本楓。
 今の会社の3つ年上の上司だ。
 彼女には……雫に対する愚痴めいた事を聞いてもらっていたんだった。
「彼女はただの上司だよ。」
「……ふっ、はっ!」
「!?」
「はっはははははは!!ただの上司に私の為に買った指輪プレゼントしたの?笑えるわ!!」
 そうだ……僕は……
『そんな彼女捨てちゃいなって! ねえ、私はどうよ?』
 あの日、塚本さんの家を訪ねて……
(ピンポーン)
『はーい。』
『こんにちは。塚本楓さんへ、お届けものにあがりました!』
……その日はそのまま一夜を共にしたのだ。
「全部調べあげたんだから言い逃れできないわよ?」
 そう言い徐ろに立ち上がりかけた彼女だが、あろう事かワンピースの裾を踏んづけて体勢を崩す。
「わっ、きゃああ!!」
手をつこうとしたのは運悪く盥の端で、バシャア、という音と共に熱湯が彼女の顔の左側を舐めていったのだった。

筆者 物部木絹子



【続きはこちら】

◆デリバリー物語《第12話 A》
「熱いっ!熱い熱い!誰か助けて!」
雫は叫ぶ。だが僕は呆然と、何もできずに突っ立っていた。


【ここまでのストーリー】

《第一話》(筆者 空志郎)
ピンポーン!こんばんは、ヤマト運輸です。お荷物お届けに参りました。
ピンポーン!ヨドバシドットコムです。
ピンポーン!アマゾンドットコムです。
ピンポーン!ウーバーイーツです。
ピンポーン!出前館です。
このタワーマンションはいつもこの時間、入口が混雑する。せっかく早く着いてもなかなか順番が回ってこない。
・・・・そしてようやくボクの番。ピンポーン!こんばんは、ウーバーイーツです。テイクアウトの品をお届けに参りました。・・・・「ありがとうございました」「またよろしくお願いします」。
今日のお客はラッキーだった。この分なら今回も高評価は間違いなし。うまく行けば高いチップもゲットできるかもしれない。でも今日の奥さんは少し様子が暗かった。顔の左側を見せないようにしてた感じもした。どうしたんだろう?ふと新一の頭をよぎったが、今日は時間がまだ早いので、新一は気にせずもう1件デリバリーをこなそうと決めた。
外に出ると、雨が降り始めていた。雨雲レーダーをチェックすると、雨雲は小さいが、断続的にやってくる予報だった。今日はもう店じまいにしよう。新一は自宅に帰ろうと決めた。

《第二話 A》(筆者 空志郎)
(別の日)
今日はどんな人に会えるのか。
新一はこの仕事をはじめて3か月になるが、人の生活の一部が垣間見れるこの配達の仕事が密かな楽しみになっていた。
コロナ禍でオンラインでやり取りすることが増え、めっきり他人と会わなくなったことも影響している。
以前はスポーツジムに時々通っていたが、今は密になり行けなくなったので、
もともとは体力づくりと新しいことをはじめる少しの好奇心が目的だった。
それが今は人間観察が第一目的になっていた。
お仕事開始。配達アプリをオンにすると、早速、近くのフランス料理店の注文通知が来た。店に行くと、料理は2人分、ワインも一緒に頼んでいる。ウーバーバッグに料理を詰め込み、新一は店を出発した。

《第三話 A》 (筆者 空志郎)
配達先に着きインターホンを押すと、中から品のある小綺麗な年配女性が出てきた。
いつものように軽い笑顔で事務的に注文の料理を渡そうとしたが、女性は少し人と話しがしたかったらしい。
「ここのフランス料理、本当に美味しいんですよ。お肉も柔らかくて、ソースも何度でも食べたくなる病み付きになるお味なの」
「ありがとうございます」
「3年前の金婚式の記念日に主人に連れてってもらったんだけど。。そのあと主人は脳卒中で車椅子になり、外出したがらなくなっちゃったからもう行けないなと諦めてたんだけど、この前、娘からこのフランス料理屋さんがデリバリー可能になったと聞いてね。。本当にありがとう。配達ご苦労様です」。年配女性は配達員に深く感謝した。
女性は新一をフランス料理店側の人間と少し混同している感じだった。ただ、新一は自分が料理したわけではないのに、ほっこりした温かい気持ちになった。便利の一端を担うだけと思っていたが、人のためにもなってるのだと感じた瞬間だった。

《第四話 A》 (筆者 三編柚菜)
新たな注文通知を受け取り、新一はペダルを強く踏み込んだ。

 昨日とは打って変わった晴天の下、フランス料理店でのやり取りも相まって気分は透き通っていた。
 だから、なのだろう。
 新一の脳裏に、あの──顔の左側を見せないようにしていた──女性の姿が過ぎった。
 緩い下り坂、ペダルから足を離す。 心地よい風に前髪をなびかせる新一は、突如呼び起こされた過去を反芻し、心が小雨に佇むような感に打たれた。
 どうしてこんなにも引っ掛かるのか……。
 疑問は霧のように、脳を支配する。
 しかし、あくまで自分は一人の配達人にすぎないのだ。 プライバシーの観点からしても、独善的な考えで首を突っ込むわけにもいくまい。
 多分、化粧の途中だったんだろう。
 新一はそう結論付けて、視界に目的地を見付けるや再びペダルに足を乗せた。
 どこまでも蒼かったはずの空を侵食する、遠方の鈍色にも気付かずに。

《第五話 A》 (筆者 物部木絹子)
イタリアン系ファミレス店の品を、閑静な住宅街の一軒家に配達し終わった時だ。再びペダルをこぎ始めた新一の視界に幾本もの細長い線が降りてくる。
 雨だ。
 ある程度の雨であれば制服は弾いてくれるが問題は頭だ……新一はヘルメットを持っていない。
(はあ……やっぱり原付免許くらい持っとくべきだったかなぁ)
 こんな時だけ都合よく後悔する。
傘差し運転はまずい。コンビニにでも寄ってタオルを買って帰ろうと思ったがこの住宅街から店舗への通り道は、暫く行かないとコンビニさえない人気のない畦道だったのを思い出し、自然とため息が漏れる。
まるで今の天気のような気分の新一であったが、橋に差し掛かったところで欄干から下の川をじっと覗き込んでいる女を見つける。
 新一は我が目を疑った。
 女が激しさを増す雨の中、傘も何も凌ぐ物を持っていなかった……というのもあるが、それよりもその女が間違いなく顔の左側を見せないようにしていたタワーマンションの奥さんだったからだ。

《第六話 A》 (筆者 ユーハバッハ正義)
色々と思うことはあったが、新一は女を無視することにした。
 悪人になるつもりはないが、歓んで善行をするつもりもない。トラブルに巻き込まれるぐらいなら無視してしまおうと思ったのだ。
新一はただ前だけを見て女の背後を通過する。これで何事もなく……
 「…………」
 髪をかき上げていたことを思い出した。そうだ、左側の髪をかき上げて耳に乗っけていた。振り向きさえすればあの奥さんの顔の左側を見ることができるのだ。
 「…………」
 もはや反射的に振り向いていた。
 「…………」
 「…………」
 そして新一の目に映ったのは、顔の左半分を手で隠してこちらを振り向く女。
 目と目が合った。
 その目は欄干の下にある川よりも深い深い黒色に塗られていた。
 新一は何事もなかったように前に向き直すと、変わらぬスピードで自転車を漕ぐ。
 雨脚が強まったのを新一は感じていた。

《第七話 A》 (筆者 物部木絹子)
「……やっぱり、忘れてるのね。」
心臓が止まるかと思った。ほとんど耳元で聞こえたその声に反射的にブレーキをかけ、停止する。
恐る恐る、背後を振り向く。
さっきの女が荷台に横座りし、こちらを深淵に誘うような漆黒の瞳で見つめていた……顔の左半分はやはり髪で隠れている。
「ひっ……!」
新一は思わず女の肩を突き飛ばす。
女はバランスを取り損ない、水を弾くアスファルトの上に倒れ込んだ。
その時、女の髪が乱れ、遂にその顔の左半分が顕になった……酷い火傷の痕だ。
新一は驚きのあまり体が動かず、その場で荒い呼吸と瞬きを数回。
ほんの2秒も経っていなかったはずだ、だが目の前の女の火傷痕は顔全体おろか、服から出た出足や首にも広がっているではないか……!
「いっ痛っ!」
突然、まるで鈍器で殴られたような頭痛が新一を襲う。
(俺は……この女(ヒト)を知っている?)
女は立ち上がり、新一に告げる。
「……さっきも、飛び降りそうに見えたのに止めなかったね。冷淡なところ、やっぱり変わってないんだね。ねえ、私の本当に欲しいモノ、早く届けてよ。」

《第八話 A》 (筆者 物部木絹子)
頭の痛みに悶える中も女はまだ何かしゃべり続けているが、どうやら新一は聞くどころではない様子だ。
「お前は……雫(しずく)? いや、まさか! だって雫は確かに……!」
 次第に新一を襲うものは痛みから胸の苦しさに変わっていった。
 思い出したのだ。
 胸を押さえ、何とか立てた自転車を支えに身を縮こまらせる。
「ちょっと、君、大丈夫ですか?」
パトロール中らしい巡査が声をかけてきた。
「……あっ、はい、ちょっと苦しくなって休んでただけなんで。もう……大丈夫です。」
巡査は一瞬怪訝そうな表情を浮かべたが、怪し気な物も持っていないし、平静を装う新一は実際大丈夫そうに見えた為、深入りする事なく「滑らないよう気をつけて」とだけ告げパトカーを走らせて行った。
 新一は一先ず家に戻ることにした。
 途中、携帯が鳴る。Uber eats本社から【悪質な嫌がらせに対する注意勧告】といった旨のメッセージだったが、今は無視だ。
戻るや否や疲労が決壊する。気が緩んだのか、新一の目からは堰を切ったように涙が溢れ出した。
……雫は、婚約までした新一の恋人だった。
2人は同棲していた。仲も良かった。毎日が幸せだった。あの事件が起こるまでは。

――一方少し前、新一が宅配に行った高級タワーマンションの一室……
「ねえ、あなた。ホントにラーメン頼んだんじゃないの!?」
小太りで厚化粧、短髪にパーマをかけた中年の夫人がやや怒りを孕んだ声で問いただす。
「はあ? ラーメンなんてわざわざ頼むわけないだろ。しかも家に! というかいきなり何なんだ。」
夫と思われる、高身長ながらも適度に腹周りに脂の乗った、白髪まじりの初老の男もやや喧嘩腰に問い返す。
「それが、この1000円札が一緒に置かれてたのよ!! 気味悪いったらありゃあしない! ウーバーイーツって書いてるわね……店員の悪戯だか何だか知らないけど、ちょっと今から文句言ってやろうと思ってたのよ!」
「……それは気持ち悪いな。人様をそんなに金に苦労してるとでも思ってふざけてやがるのか!? ああ、腹が立つ奴だな。会社にビシっと言ってやれ!」

《第九話 A》 (筆者 パチビードク)
再び新一の懐古が始まる。

そう、僕は雫と同棲していた。同棲といっても別々にアパートを借りていた。しかしほとんど僕のアパートに入り浸りだ。すなわち半同棲みたいなものだ。

「新一さん、いつまでこの仕事しているの。新一さんは、いつまでもここでアルバイトしている人ではないわ」
僕も気付いていた。このままでは結婚など出来ない。そして、本格的に就職活動を始めた。
そのかいあって、ようやく正社員に採用された。
仕事は忙しく、毎日朝早くから夜遅くまで働き詰めだった。ほとんどヘトヘトになってアパートに帰った。
当然、雫と一緒にいる時間は減った。雫は自分のアパートへ戻ってしまった。
僕は内心ほっとした。
そして、あの事件が起こってしまった。

《第十話 A》 (筆者 物部木絹子)
その日もやはり雫が泊まりにきていた。このところの彼女はメンヘラ……と言えば聞こえが悪いが、正直ちょっと変になっていて、訳もないのに急に泣き出したり執拗に僕の行動を把握したがったりで手を焼いていた。かと言って簡単に別れを切り出すには難しい情も積み重なっていた為ズルズルと関係が続いていた感じだった。
 その日の深夜2時頃だ。キッチンの方で雫が明かりを点けて何やらごぞごぞやっている物音で否が応でも目が覚めた。
「……おい、雫? 何やってんだ?」
「……」
動物本能的な、嫌な予感が背筋を伝う。
「ねえ。」
そう呟き、こちらに背を向け床に座っていた彼女がゆっくり半回転する。同時に自分の前に置いていた盥(たらい)のような物も動かした。
「私のせいなんだよね。私が悪いから、ちゃんと同棲さえもしてくれないんでしょ? 私の前世が殺人鬼だから。」
「……は?」
ふざけているのかと思いたかったが、鬼気迫る表情と喋り方がそれを許さない。
「占いでそう言われたの。
確かに私なんかダメダメだよ? ……ねえ、でも嫌だ……お願いだから一人にしないで!」
「さっきから何言って!?」
彼女の方に歩み寄り、盥が邪魔で移動させようと思った時だ。
「あつっ!」
指先に少し触れてしまい気づく。中には並々と熱湯が張られていた。

《第11話 A》 (筆者 物部木絹子)
「離れてよっ!!」
そう言うと雫は僕を突き飛ばす。
「おいっ!何やってんだよ!!てか、僕はちゃんと雫との結婚考えてるし……今だって同棲続けてるじゃないか。この形は二人で話し合った結果だろ!」
 近寄れば今にも盥の熱湯を被りそうな彼女に向かい、何とか落ち着いてもらえるよう話しかける。勿論、言っていることは本心だ。
……いや、本心か?
「嘘。本当はカエデさんの方がいいんでしょ。」
 カエデ……塚本楓。
 今の会社の3つ年上の上司だ。
 彼女には……雫に対する愚痴めいた事を聞いてもらっていたんだった。
「彼女はただの上司だよ。」
「……ふっ、はっ!」
「!?」
「はっはははははは!!ただの上司に私の為に買った指輪プレゼントしたの?笑えるわ!!」
 そうだ……僕は……
『そんな彼女捨てちゃいなって!ねえ、私はどうよ?』
 あの日、塚本さんの家を訪ねて……
(ピンポーン)
『はーい。』
『こんにちは。塚本楓さんへ、お届けものにあがりました!』
……その日はそのまま一夜を共にしたのだ。
「全部調べあげたんだから言い逃れできないわよ?」
 そう言い徐ろに立ち上がりかけた彼女だが、あろう事かワンピースの裾を踏んづけて体勢を崩す。
「わっ、きゃああ!!」
手をつこうとしたのは運悪く盥の端で、バシャア、という音と共に熱湯が彼女の顔の左側を舐めていったのだった。


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Suspicion-疑惑 -《第三話 B》

救急車で運ばれた姉は、救命治療室(ICU)にそのまま運ばれた。
医師や看護師がバタバタと姉を救うために動き回っている。俺は、ICUの隣にある待合室で家族の到着を待っていた。

「あの男が撃ったに違いない……」
るくすの感情があらぶっていた。

USBを手に入れた男は、るくすと別れた後、護衛の男達と車に乗り込み車を走らせようとした時に、後方から乾いた「パン!」という音を聞いていた。
男は一瞬、自分が狙われたかと思い座席に伏せたが、るくすの姉が単車から転げ落ちたのを見て、即時にその場から離れろと運転手に告げていた。

一方、るくすの姉はICUで薄れていく意識の中で、背中に熱く重い痛みを感じながら、どこからか聞こえてくる声に耳を傾けていた。

「わたしは、どうしたんだろう?」

看護師の声の奥から、違った声が私の意識に入ってくる。初めは、小さかった声が、意識が遠のいていくにつれ……大きくなって来た。

謎の声「まだダメなのか?」
意識が飛ぶにつれて、謎の声が鮮明になってきた。

姉「まだダメって……どういうこと?」「わたし……このまま死ぬの?」「そういえば、背中の痛みもなくなっている……」

謎の声「これでダメなら諦めるしかないよね」

姉の意識が完全になくなった……。

姉:天本みえる 19歳 現役の大学生

筆者 るくすすん
 



【続きはこちら】

続きの話を募集中。


【ここまでのストーリー】


《第一話》(筆者 るくすすん)

梅雨入りしそうなじっとりとした真夜中
ひとりで単車を転がしていた

ふッとバックミラーをのぞき込むと
煌々と警察車両の赤色灯とサイレンが俺を追っていた

警察車両の1台が、拡声器を使い停止命令を訴えていた
『とまれ小僧!!!』

すごい剣幕で、俺の単車の後を追いかけてくる

素直に止まるはずもない
東京から神奈川に入る県境
多摩川の上を走り向ける

目の前に見えるのは川崎の高層ビル群と神奈川県警の交機

後方には蒲田警察
前方には神奈川県警の交機

多摩川の橋の上で赤色灯に囲まれ 絶体絶命!

しばらくすると逆車線の川崎方面から一台の軽自動車が上って来た

俺は賺さず、軽自動車が上って来た方向へハンドルを切り
アクセルを吹かした

まんまと警察車両をかわし武蔵小杉方面へ走り出す
後方からサイレンの音が聞こえるが追いつく感じはしなかった…

再び東京方面へ単車を走らせ、環八を抜け駒沢通りへ
呑川親水公園で単車を降りた。

すると、暗闇から3人の男達が現れ俺の名前を呼んだ!

 アマモト ルクス
 天本るくす 年は17歳 現役高校性
 蒲田を流れる小汚い呑川近辺で育った
 家族は大手企業に勤める父と貿易会社を営む母
 兄弟は姉が2人(長女は23歳 次女は19歳の大学生)

俺は今日…次女の姉を助けにこの場所にやって来た…


《第二話 A》(筆者 るくすすん)

『おい!るくす』
『久々だな』

声をかけてきた男の顔を睨め付けるように…うなずいた
『姉貴は無事なんだろうな?』

男が不機嫌そうに『安心しろよ 何もしてね~よ』
『ところで…例のモノは持ってきたんだろうな?』

俺はズボンのポケットに手を入れ、USBを出しながら
『姉貴と交換だろう』

男は護衛の二人にうなずき指示を出した
護衛の二人は、後ろに停めてあった車に向かい
るくすの姉を後部座席から降ろした

男が『お前の姉貴は無事だ、そのUSBを渡せ…』
 
るくす
『姉貴がこっちに来てからだ』

るくすが姉の腕をつかみ、単車の後ろに誘導した
護衛の二人は、男の方へ戻り
手に持っていたUSBを男の手のひらに渡した

男はすかさず、パソコンに刺しUSBの中身を確認した

俺は姉貴にヘルメットを渡し
姉貴はヘルメットをかぶり単車の後部座席に座った

男は『これだよ!これ!』
『コピーは取ってないだろうな?』

 るくすは後部座席に座っている姉の様子の見ながら
『安心しろ そんな物に興味ね~よ』

男は『クスッ』と笑いながら護衛の二人に『帰るぞ』とつぶやき
車の方へ向かいはじめた

るくすは、姉に『大丈夫か?』と一言かけ
姉が『うん』とうなずいた

単車のエンジンをかけ、Lowにギアを入れ
男を背に走り出した…

呑川親水公園の交差点を走り抜けた時…
乾いた『パン』という音が聞こえ、姉が単車から転げ落ちた…


《第三話 B》(筆者 るくすすん)

救急車で運ばれた姉は、救命治療室(ICU)にそのまま運ばれた。
医師や看護師がバタバタと姉を救うために動き回っている。俺は、ICUの隣にある待合室で家族の到着を待っていた。

「あの男が撃ったに違いない……」
るくすの感情があらぶっていた。

USBを手に入れた男は、るくすと別れた後、護衛の男達と車に乗り込み車を走らせようとした時に、後方から乾いた「パン!」という音を聞いていた。
男は一瞬、自分が狙われたかと思い座席に伏せたが、るくすの姉が単車から転げ落ちたのを見て、即時にその場から離れろと運転手に告げていた。

一方、るくすの姉はICUで薄れていく意識の中で、背中に熱く重い痛みを感じながら、どこからか聞こえてくる声に耳を傾けていた。

「わたしは、どうしたんだろう?」

看護師の声の奥から、違った声が私の意識に入ってくる。初めは、小さかった声が、意識が遠のいていくにつれ……大きくなって来た。

謎の声「まだダメなのか?」
意識が飛ぶにつれて、謎の声が鮮明になってきた。

姉「まだダメって……どういうこと?」「わたし……このまま死ぬの?」「そういえば、背中の痛みもなくなっている……」

謎の声「これでダメなら諦めるしかないよね」

姉の意識が完全になくなった……。

姉:天本みえる 19歳 現役の大学生


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デリバリー物語《第十話 A》

その日もやはり雫が泊まりにきていた。このところの彼女はメンヘラ……と言えば聞こえが悪いが、正直ちょっと変になっていて、訳もないのに急に泣き出したり執拗に僕の行動を把握したがったりで手を焼いていた。かと言って簡単に別れを切り出すには難しい情も積み重なっていた為ズルズルと関係が続いていた感じだった。
 その日の深夜2時頃だ。キッチンの方で雫が明かりを点けて何やらごぞごぞやっている物音で否が応でも目が覚めた。
「……おい、雫? 何やってんだ?」
「……」
動物本能的な、嫌な予感が背筋を伝う。
「ねえ。」
そう呟き、こちらに背を向け床に座っていた彼女がゆっくり半回転する。同時に自分の前に置いていた盥(たらい)のような物も動かした。
「私のせいなんだよね。私が悪いから、ちゃんと同棲さえもしてくれないんでしょ? 私の前世が殺人鬼だから。」
「……は?」
ふざけているのかと思いたかったが、鬼気迫る表情と喋り方がそれを許さない。
「占いでそう言われたの。
確かに私なんかダメダメだよ? ……ねえ、でも嫌だ……お願いだから一人にしないで!」
「さっきから何言って!?」
彼女の方に歩み寄り、盥が邪魔で移動させようと思った時だ。
「あつっ!」
指先に少し触れてしまい気づく。中には並々と熱湯が張られていた。

筆者 物部木絹子



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◆デリバリー物語《第11話 A》
「離れてよっ!!」
そう言うと雫は僕を突き飛ばす。


【ここまでのストーリー】

《第一話》(筆者 空志郎)
ピンポーン!こんばんは、ヤマト運輸です。お荷物お届けに参りました。
ピンポーン!ヨドバシドットコムです。
ピンポーン!アマゾンドットコムです。
ピンポーン!ウーバーイーツです。
ピンポーン!出前館です。
このタワーマンションはいつもこの時間、入口が混雑する。せっかく早く着いてもなかなか順番が回ってこない。
・・・・そしてようやくボクの番。ピンポーン!こんばんは、ウーバーイーツです。テイクアウトの品をお届けに参りました。・・・・「ありがとうございました」「またよろしくお願いします」。
今日のお客はラッキーだった。この分なら今回も高評価は間違いなし。うまく行けば高いチップもゲットできるかもしれない。でも今日の奥さんは少し様子が暗かった。顔の左側を見せないようにしてた感じもした。どうしたんだろう?ふと新一の頭をよぎったが、今日は時間がまだ早いので、新一は気にせずもう1件デリバリーをこなそうと決めた。
外に出ると、雨が降り始めていた。雨雲レーダーをチェックすると、雨雲は小さいが、断続的にやってくる予報だった。今日はもう店じまいにしよう。新一は自宅に帰ろうと決めた。

《第二話 A》(筆者 空志郎)
(別の日)
今日はどんな人に会えるのか。
新一はこの仕事をはじめて3か月になるが、人の生活の一部が垣間見れるこの配達の仕事が密かな楽しみになっていた。
コロナ禍でオンラインでやり取りすることが増え、めっきり他人と会わなくなったことも影響している。
以前はスポーツジムに時々通っていたが、今は密になり行けなくなったので、
もともとは体力づくりと新しいことをはじめる少しの好奇心が目的だった。
それが今は人間観察が第一目的になっていた。
お仕事開始。配達アプリをオンにすると、早速、近くのフランス料理店の注文通知が来た。店に行くと、料理は2人分、ワインも一緒に頼んでいる。ウーバーバッグに料理を詰め込み、新一は店を出発した。

《第三話 A》 (筆者 空志郎)
配達先に着きインターホンを押すと、中から品のある小綺麗な年配女性が出てきた。
いつものように軽い笑顔で事務的に注文の料理を渡そうとしたが、女性は少し人と話しがしたかったらしい。
「ここのフランス料理、本当に美味しいんですよ。お肉も柔らかくて、ソースも何度でも食べたくなる病み付きになるお味なの」
「ありがとうございます」
「3年前の金婚式の記念日に主人に連れてってもらったんだけど。。そのあと主人は脳卒中で車椅子になり、外出したがらなくなっちゃったからもう行けないなと諦めてたんだけど、この前、娘からこのフランス料理屋さんがデリバリー可能になったと聞いてね。。本当にありがとう。配達ご苦労様です」。年配女性は配達員に深く感謝した。
女性は新一をフランス料理店側の人間と少し混同している感じだった。ただ、新一は自分が料理したわけではないのに、ほっこりした温かい気持ちになった。便利の一端を担うだけと思っていたが、人のためにもなってるのだと感じた瞬間だった。

《第四話 A》 (筆者 三編柚菜)
新たな注文通知を受け取り、新一はペダルを強く踏み込んだ。

 昨日とは打って変わった晴天の下、フランス料理店でのやり取りも相まって気分は透き通っていた。
 だから、なのだろう。
 新一の脳裏に、あの──顔の左側を見せないようにしていた──女性の姿が過ぎった。
 緩い下り坂、ペダルから足を離す。 心地よい風に前髪をなびかせる新一は、突如呼び起こされた過去を反芻し、心が小雨に佇むような感に打たれた。
 どうしてこんなにも引っ掛かるのか……。
 疑問は霧のように、脳を支配する。
 しかし、あくまで自分は一人の配達人にすぎないのだ。 プライバシーの観点からしても、独善的な考えで首を突っ込むわけにもいくまい。
 多分、化粧の途中だったんだろう。
 新一はそう結論付けて、視界に目的地を見付けるや再びペダルに足を乗せた。
 どこまでも蒼かったはずの空を侵食する、遠方の鈍色にも気付かずに。

《第五話 A》 (筆者 物部木絹子)
イタリアン系ファミレス店の品を、閑静な住宅街の一軒家に配達し終わった時だ。再びペダルをこぎ始めた新一の視界に幾本もの細長い線が降りてくる。
 雨だ。
 ある程度の雨であれば制服は弾いてくれるが問題は頭だ……新一はヘルメットを持っていない。
(はあ……やっぱり原付免許くらい持っとくべきだったかなぁ)
 こんな時だけ都合よく後悔する。
傘差し運転はまずい。コンビニにでも寄ってタオルを買って帰ろうと思ったがこの住宅街から店舗への通り道は、暫く行かないとコンビニさえない人気のない畦道だったのを思い出し、自然とため息が漏れる。
まるで今の天気のような気分の新一であったが、橋に差し掛かったところで欄干から下の川をじっと覗き込んでいる女を見つける。
 新一は我が目を疑った。
 女が激しさを増す雨の中、傘も何も凌ぐ物を持っていなかった……というのもあるが、それよりもその女が間違いなく顔の左側を見せないようにしていたタワーマンションの奥さんだったからだ。

《第六話 A》 (筆者 ユーハバッハ正義)
色々と思うことはあったが、新一は女を無視することにした。
 悪人になるつもりはないが、歓んで善行をするつもりもない。トラブルに巻き込まれるぐらいなら無視してしまおうと思ったのだ。
新一はただ前だけを見て女の背後を通過する。これで何事もなく……
 「…………」
 髪をかき上げていたことを思い出した。そうだ、左側の髪をかき上げて耳に乗っけていた。振り向きさえすればあの奥さんの顔の左側を見ることができるのだ。
 「…………」
 もはや反射的に振り向いていた。
 「…………」
 「…………」
 そして新一の目に映ったのは、顔の左半分を手で隠してこちらを振り向く女。
 目と目が合った。
 その目は欄干の下にある川よりも深い深い黒色に塗られていた。
 新一は何事もなかったように前に向き直すと、変わらぬスピードで自転車を漕ぐ。
 雨脚が強まったのを新一は感じていた。

《第七話 A》 (筆者 物部木絹子)
「……やっぱり、忘れてるのね。」
心臓が止まるかと思った。ほとんど耳元で聞こえたその声に反射的にブレーキをかけ、停止する。
恐る恐る、背後を振り向く。
さっきの女が荷台に横座りし、こちらを深淵に誘うような漆黒の瞳で見つめていた……顔の左半分はやはり髪で隠れている。
「ひっ……!」
新一は思わず女の肩を突き飛ばす。
女はバランスを取り損ない、水を弾くアスファルトの上に倒れ込んだ。
その時、女の髪が乱れ、遂にその顔の左半分が顕になった……酷い火傷の痕だ。
新一は驚きのあまり体が動かず、その場で荒い呼吸と瞬きを数回。
ほんの2秒も経っていなかったはずだ、だが目の前の女の火傷痕は顔全体おろか、服から出た出足や首にも広がっているではないか……!
「いっ痛っ!」
突然、まるで鈍器で殴られたような頭痛が新一を襲う。
(俺は……この女(ヒト)を知っている?)
女は立ち上がり、新一に告げる。
「……さっきも、飛び降りそうに見えたのに止めなかったね。冷淡なところ、やっぱり変わってないんだね。ねえ、私の本当に欲しいモノ、早く届けてよ。」

《第八話 A》 (筆者 物部木絹子)
頭の痛みに悶える中も女はまだ何かしゃべり続けているが、どうやら新一は聞くどころではない様子だ。
「お前は……雫(しずく)? いや、まさか! だって雫は確かに……!」
 次第に新一を襲うものは痛みから胸の苦しさに変わっていった。
 思い出したのだ。
 胸を押さえ、何とか立てた自転車を支えに身を縮こまらせる。
「ちょっと、君、大丈夫ですか?」
パトロール中らしい巡査が声をかけてきた。
「……あっ、はい、ちょっと苦しくなって休んでただけなんで。もう……大丈夫です。」
巡査は一瞬怪訝そうな表情を浮かべたが、怪し気な物も持っていないし、平静を装う新一は実際大丈夫そうに見えた為、深入りする事なく「滑らないよう気をつけて」とだけ告げパトカーを走らせて行った。
 新一は一先ず家に戻ることにした。
 途中、携帯が鳴る。Uber eats本社から【悪質な嫌がらせに対する注意勧告】といった旨のメッセージだったが、今は無視だ。
戻るや否や疲労が決壊する。気が緩んだのか、新一の目からは堰を切ったように涙が溢れ出した。
……雫は、婚約までした新一の恋人だった。
2人は同棲していた。仲も良かった。毎日が幸せだった。あの事件が起こるまでは。

――一方少し前、新一が宅配に行った高級タワーマンションの一室……
「ねえ、あなた。ホントにラーメン頼んだんじゃないの!?」
小太りで厚化粧、短髪にパーマをかけた中年の夫人がやや怒りを孕んだ声で問いただす。
「はあ? ラーメンなんてわざわざ頼むわけないだろ。しかも家に! というかいきなり何なんだ。」
夫と思われる、高身長ながらも適度に腹周りに脂の乗った、白髪まじりの初老の男もやや喧嘩腰に問い返す。
「それが、この1000円札が一緒に置かれてたのよ!! 気味悪いったらありゃあしない! ウーバーイーツって書いてるわね……店員の悪戯だか何だか知らないけど、ちょっと今から文句言ってやろうと思ってたのよ!」
「……それは気持ち悪いな。人様をそんなに金に苦労してるとでも思ってふざけてやがるのか!? ああ、腹が立つ奴だな。会社にビシっと言ってやれ!」

《第九話 A》 (筆者 パチビードク)
再び新一の懐古が始まる。

そう、僕は雫と同棲していた。同棲といっても別々にアパートを借りていた。しかしほとんど僕のアパートに入り浸りだ。すなわち半同棲みたいなものだ。

「新一さん、いつまでこの仕事しているの。新一さんは、いつまでもここでアルバイトしている人ではないわ」
僕も気付いていた。このままでは結婚など出来ない。そして、本格的に就職活動を始めた。
そのかいあって、ようやく正社員に採用された。
仕事は忙しく、毎日朝早くから夜遅くまで働き詰めだった。ほとんどヘトヘトになってアパートに帰った。
当然、雫と一緒にいる時間は減った。雫は自分のアパートへ戻ってしまった。
僕は内心ほっとした。
そして、あの事件が起こってしまった。

《第十話 A》 (筆者 物部木絹子)
その日もやはり雫が泊まりにきていた。このところの彼女はメンヘラ……と言えば聞こえが悪いが、正直ちょっと変になっていて、訳もないのに急に泣き出したり執拗に僕の行動を把握したがったりで手を焼いていた。かと言って簡単に別れを切り出すには難しい情も積み重なっていた為ズルズルと関係が続いていた感じだった。
 その日の深夜2時頃だ。キッチンの方で雫が明かりを点けて何やらごぞごぞやっている物音で否が応でも目が覚めた。
「……おい、雫? 何やってんだ?」
「……」
動物本能的な、嫌な予感が背筋を伝う。
「ねえ。」
そう呟き、こちらに背を向け床に座っていた彼女がゆっくり半回転する。同時に自分の前に置いていた盥(たらい)のような物も動かした。
「私のせいなんだよね。私が悪いから、ちゃんと同棲さえもしてくれないんでしょ? 私の前世が殺人鬼だから。」
「……は?」
ふざけているのかと思いたかったが、鬼気迫る表情と喋り方がそれを許さない。
「占いでそう言われたの。
確かに私なんかダメダメだよ? ……ねえ、でも嫌だ……お願いだから一人にしないで!」
「さっきから何言って!?」
彼女の方に歩み寄り、盥が邪魔で移動させようと思った時だ。
「あつっ!」
指先に少し触れてしまい気づく。中には並々と熱湯が張られていた。


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【青春小説】春色の思い出とともに《第六話 A》

「……そうなんだ!」
 自分でも言い方がぎこちなかったとは感じたけれど、向こうにも何となく気まずい空気は伝わってたみたいで少しの間言葉を探す彼女との間に沈黙が流れる。
「……俺、事故に遭ってさ、昨年の5月。軽く走ったりは平気なんだけど部活でやるってなったらちょっと厳しい、的なこと言われちゃって。」
 ペラペラ暴露してしまう自分が他人のように思えた。でも何だか 

『どうして?』

 先にそう訊かれるのが矢鱈に怖かったのだ。

筆者 物部木絹子



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【ここまでのストーリー】

《第一話》(筆者 矢田川いつき)
「アキー! 一緒に帰ろー!」
放課後のチャイムと同時に、猪の如く向かってくる影がひとつ。
しかし俺は、それを華麗なステップでかわす。
「甘い!」
「わー! 避けないでー!」
ドシーン、と音を立てそうな勢いで彼女が転びそうになる……が、受け止めるまでが俺の役目。
「大丈夫か、真菜?」
「ありがと……って、誰のせいだと!」
「ハハハ」
何気ない、いつもの日常。
ずっと続くと、思ってた。
「帰るか」
「うん!」
俺らはもう……高校3年生だ。

《第二話 A》(筆者 ハニービースト)
俺と真菜が出会ったのは高校1年の夏。暑い日だった。
学校帰りにバス停に向かう途中、急な夕立ちに見舞われ折りたたみ傘を出すと…
「すみません!その傘、一緒に入れて下さい!」と急に女の子が少しぶつかり気味に入ってきた。
「おーっとっと…えっ!なに?」
「今日、雨の予報なんてなかったよね。あーこんなに濡れちゃったー」
「あっ、このハンカチ使います?」
「ありがとう……これって相合い傘ですよねー。少しドキドキしますね。しませんか?」
「いや、まあー」
「いつもバスで本読んでますよね!どんな本を読んでるんですか?」
「いや、まあー……」

それが真菜と俺の最初の出会いだった。

《第三話 C》(筆者 恒李)
傘で覆われる空間は一種のパーソナルスペースだと考えている。そこへ名前も知らない人がいきなり侵入してくるわけだ。普通は嫌悪感を抱くだろう。しかしその悪意の無い強引さと笑顔に負け、このくらいいいかと寛容になる。

「今日は本読まないの?」
バスまでの道のりで同じ学年であることを知り、敬語が外れた口調で覗き込むように訊いてくる。座る気のなかった二人席に腰掛けてるから距離が近い。
「もうぜんぶ読み終わったし、新しいの買おうと思う」
「へぇ、じゃあ今日はお喋りできるね」
横を見ると、目を細めて柔らかく笑うその子がいた。雨に濡れ、いくつもの小さな束を作る前髪が、その笑顔のアクセントになっているように思えた。

《第四話 C》(筆者 熊倉恋太郎)
「ね、ね。引き締まった体してるけどさ、もしかして何か運動とかしてるの?」
純粋な興味からの質問だろう。髪を貸したハンカチで拭いながら、間を持たせるためにという意味合いもあるかもしれない。
「いや、今は特に……」
「むー……さっきからそうやって適当な返事ばっかり……」
傘を少し引っ張る少女。急な動きにバランスを崩された俺は、1歩彼女の方へ寄ってしまう。

《第五話 A》(筆者 熊倉恋太郎)
「ちゃんと私の目を見て、答えてください!」
わざとらしい敬語と強めにした語気で、俺に問う。
雨の中でも負けることのない女の子特有の甘い香りが目の前にあり、心臓が大きく揺れる。
「むー……」
俺の事をじっと見つめてくる。
そんな可愛らしい姿に負けてしまった俺は、名前すらも知らない人に、これまで封じ込めていた言葉を漏らしてしまった。
「昔……サッカーをやってたんだ」

《第六話 A》(筆者 物部木絹子)

「……そうなんだ!」
 自分でも言い方がぎこちなかったとは感じたけれど、向こうにも何となく気まずい空気は伝わってたみたいで少しの間言葉を探す彼女との間に沈黙が流れる。
「……俺、事故に遭ってさ、昨年の5月。軽く走ったりは平気なんだけど部活でやるってなったらちょっと厳しい、的なこと言われちゃって。」
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『どうして?』

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【青春小説】春色の思い出とともに《第五話 A》

「ちゃんと私の目を見て、答えてください!」
わざとらしい敬語と強めにした語気で、俺に問う。
雨の中でも負けることのない女の子特有の甘い香りが目の前にあり、心臓が大きく揺れる。
「むー……」
俺の事をじっと見つめてくる。
そんな可愛らしい姿に負けてしまった俺は、名前すらも知らない人に、これまで封じ込めていた言葉を漏らしてしまった。
「昔……サッカーをやってたんだ」

筆者 熊倉恋太郎



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「……そうなんだ!」 自分でも言い方がぎこちなかったとは感じたけれど、


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《第一話》(筆者 矢田川いつき)
「アキー! 一緒に帰ろー!」
放課後のチャイムと同時に、猪の如く向かってくる影がひとつ。
しかし俺は、それを華麗なステップでかわす。
「甘い!」
「わー! 避けないでー!」
ドシーン、と音を立てそうな勢いで彼女が転びそうになる……が、受け止めるまでが俺の役目。
「大丈夫か、真菜?」
「ありがと……って、誰のせいだと!」
「ハハハ」
何気ない、いつもの日常。
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「帰るか」
「うん!」
俺らはもう……高校3年生だ。

《第二話 A》(筆者 ハニービースト)
俺と真菜が出会ったのは高校1年の夏。暑い日だった。
学校帰りにバス停に向かう途中、急な夕立ちに見舞われ折りたたみ傘を出すと…
「すみません!その傘、一緒に入れて下さい!」と急に女の子が少しぶつかり気味に入ってきた。
「おーっとっと…えっ!なに?」
「今日、雨の予報なんてなかったよね。あーこんなに濡れちゃったー」
「あっ、このハンカチ使います?」
「ありがとう……これって相合い傘ですよねー。少しドキドキしますね。しませんか?」
「いや、まあー」
「いつもバスで本読んでますよね!どんな本を読んでるんですか?」
「いや、まあー……」

それが真菜と俺の最初の出会いだった。

《第三話 C》(筆者 恒李)
傘で覆われる空間は一種のパーソナルスペースだと考えている。そこへ名前も知らない人がいきなり侵入してくるわけだ。普通は嫌悪感を抱くだろう。しかしその悪意の無い強引さと笑顔に負け、このくらいいいかと寛容になる。

「今日は本読まないの?」
バスまでの道のりで同じ学年であることを知り、敬語が外れた口調で覗き込むように訊いてくる。座る気のなかった二人席に腰掛けてるから距離が近い。
「もうぜんぶ読み終わったし、新しいの買おうと思う」
「へぇ、じゃあ今日はお喋りできるね」
横を見ると、目を細めて柔らかく笑うその子がいた。雨に濡れ、いくつもの小さな束を作る前髪が、その笑顔のアクセントになっているように思えた。

《第四話 C》(筆者 熊倉恋太郎)
「ね、ね。引き締まった体してるけどさ、もしかして何か運動とかしてるの?」
純粋な興味からの質問だろう。髪を貸したハンカチで拭いながら、間を持たせるためにという意味合いもあるかもしれない。
「いや、今は特に……」
「むー……さっきからそうやって適当な返事ばっかり……」
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《第五話 A》(筆者 熊倉恋太郎)
「ちゃんと私の目を見て、答えてください!」
わざとらしい敬語と強めにした語気で、俺に問う。
雨の中でも負けることのない女の子特有の甘い香りが目の前にあり、心臓が大きく揺れる。
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「ね、ね。引き締まった体してるけどさ、もしかして何か運動とかしてるの?」
純粋な興味からの質問だろう。髪を貸したハンカチで拭いながら、間を持たせるためにという意味合いもあるかもしれない。
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筆者 熊倉恋太郎



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《第一話》(筆者 矢田川いつき)
「アキー! 一緒に帰ろー!」
放課後のチャイムと同時に、猪の如く向かってくる影がひとつ。
しかし俺は、それを華麗なステップでかわす。
「甘い!」
「わー! 避けないでー!」
ドシーン、と音を立てそうな勢いで彼女が転びそうになる……が、受け止めるまでが俺の役目。
「大丈夫か、真菜?」
「ありがと……って、誰のせいだと!」
「ハハハ」
何気ない、いつもの日常。
ずっと続くと、思ってた。
「帰るか」
「うん!」
俺らはもう……高校3年生だ。

《第二話 A》(筆者 ハニービースト)
俺と真菜が出会ったのは高校1年の夏。暑い日だった。
学校帰りにバス停に向かう途中、急な夕立ちに見舞われ折りたたみ傘を出すと…
「すみません!その傘、一緒に入れて下さい!」と急に女の子が少しぶつかり気味に入ってきた。
「おーっとっと…えっ!なに?」
「今日、雨の予報なんてなかったよね。あーこんなに濡れちゃったー」
「あっ、このハンカチ使います?」
「ありがとう……これって相合い傘ですよねー。少しドキドキしますね。しませんか?」
「いや、まあー」
「いつもバスで本読んでますよね!どんな本を読んでるんですか?」
「いや、まあー……」

それが真菜と俺の最初の出会いだった。

《第三話 C》(筆者 恒李)
傘で覆われる空間は一種のパーソナルスペースだと考えている。そこへ名前も知らない人がいきなり侵入してくるわけだ。普通は嫌悪感を抱くだろう。しかしその悪意の無い強引さと笑顔に負け、このくらいいいかと寛容になる。

「今日は本読まないの?」
バスまでの道のりで同じ学年であることを知り、敬語が外れた口調で覗き込むように訊いてくる。座る気のなかった二人席に腰掛けてるから距離が近い。
「もうぜんぶ読み終わったし、新しいの買おうと思う」
「へぇ、じゃあ今日はお喋りできるね」
横を見ると、目を細めて柔らかく笑うその子がいた。雨に濡れ、いくつもの小さな束を作る前髪が、その笑顔のアクセントになっているように思えた。

《第四話 C》(筆者 熊倉恋太郎)
「ね、ね。引き締まった体してるけどさ、もしかして何か運動とかしてるの?」
純粋な興味からの質問だろう。髪を貸したハンカチで拭いながら、間を持たせるためにという意味合いもあるかもしれない。
「いや、今は特に……」
「むー……さっきからそうやって適当な返事ばっかり……」
傘を少し引っ張る少女。急な動きにバランスを崩された俺は、1歩彼女の方へ寄ってしまう。


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【青春小説】春色の思い出とともに《第四話 B》

「進路、決まってる?」
ハンカチで髪をふく彼女に話しかける。独り言みたいな声量で。
彼女が、ピタリと手を止めた。
「アキは?」
「質問を質問で返すな!」
軽く肩をはたいた。いつものように二人で笑う。なんてことはなく、いつになく重い空気がながれている。
「アキ、は?」
もう一度、彼女が、真菜が聞く。
答えられない。
「まあ、私から言わなきゃだよね」
珍しく苦笑いを浮かべる真菜。
「アキ、読み終わった本は面白かった?」
急に何で本の話。
「あれ、書いてるの私。初めて会った時に読んでたのも」
それは、え?どういう。
「私、小説家なんだ。」
理解が追いつかなかった。

筆者 多菓子



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【ここまでのストーリー】

《第一話》(筆者 矢田川いつき)
「アキー! 一緒に帰ろー!」
放課後のチャイムと同時に、猪の如く向かってくる影がひとつ。
しかし俺は、それを華麗なステップでかわす。
「甘い!」
「わー! 避けないでー!」
ドシーン、と音を立てそうな勢いで彼女が転びそうになる……が、受け止めるまでが俺の役目。
「大丈夫か、真菜?」
「ありがと……って、誰のせいだと!」
「ハハハ」
何気ない、いつもの日常。
ずっと続くと、思ってた。
「帰るか」
「うん!」
俺らはもう……高校3年生だ。

《第二話 A》(筆者 ハニービースト)
俺と真菜が出会ったのは高校1年の夏。暑い日だった。
学校帰りにバス停に向かう途中、急な夕立ちに見舞われ折りたたみ傘を出すと…
「すみません!その傘、一緒に入れて下さい!」と急に女の子が少しぶつかり気味に入ってきた。
「おーっとっと…えっ!なに?」
「今日、雨の予報なんてなかったよね。あーこんなに濡れちゃったー」
「あっ、このハンカチ使います?」
「ありがとう……これって相合い傘ですよねー。少しドキドキしますね。しませんか?」
「いや、まあー」
「いつもバスで本読んでますよね!どんな本を読んでるんですか?」
「いや、まあー……」

それが真菜と俺の最初の出会いだった。

《第三話 C》(筆者 恒李)
傘で覆われる空間は一種のパーソナルスペースだと考えている。そこへ名前も知らない人がいきなり侵入してくるわけだ。普通は嫌悪感を抱くだろう。しかしその悪意の無い強引さと笑顔に負け、このくらいいいかと寛容になる。

「今日は本読まないの?」
バスまでの道のりで同じ学年であることを知り、敬語が外れた口調で覗き込むように訊いてくる。座る気のなかった二人席に腰掛けてるから距離が近い。
「もうぜんぶ読み終わったし、新しいの買おうと思う」
「へぇ、じゃあ今日はお喋りできるね」
横を見ると、目を細めて柔らかく笑うその子がいた。雨に濡れ、いくつもの小さな束を作る前髪が、その笑顔のアクセントになっているように思えた。

《第四話 B》(筆者 多菓子)
「進路、決まってる?」
ハンカチで髪をふく彼女に話しかける。独り言みたいな声量で。
彼女が、ピタリと手を止めた。
「アキは?」
「質問を質問で返すな!」
軽く肩をはたいた。いつものように二人で笑う。なんてことはなく、いつになく重い空気がながれている。
「アキ、は?」
もう一度、彼女が、真菜が聞く。
答えられない。
「まあ、私から言わなきゃだよね」
珍しく苦笑いを浮かべる真菜。
「アキ、読み終わった本は面白かった?」
急に何で本の話。
「あれ、書いてるの私。初めて会った時に読んでたのも」
それは、え?どういう。
「私、小説家なんだ。」
理解が追いつかなかった。


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傘で覆われる空間は一種のパーソナルスペースだと考えている。そこへ名前も知らない人がいきなり侵入してくるわけだ。普通は嫌悪感を抱くだろう。しかしその悪意の無い強引さと笑顔に負け、このくらいいいかと寛容になる。

「今日は本読まないの?」
バスまでの道のりで同じ学年であることを知り、敬語が外れた口調で覗き込むように訊いてくる。座る気のなかった二人席に腰掛けてるから距離が近い。
「もうぜんぶ読み終わったし、新しいの買おうと思う」
「へぇ、じゃあ今日はお喋りできるね」
横を見ると、目を細めて柔らかく笑うその子がいた。雨に濡れ、いくつもの小さな束を作る前髪が、その笑顔のアクセントになっているように思えた。

筆者 恒李



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◆【青春小説】春色の思い出とともに《第四話 B》
「進路、決まってる?」

◆【青春小説】春色の思い出とともに《第四話 C》
「ね、ね。引き締まった体してるけどさ、もしかして何か運動とかしてるの?」

◆【青春小説】春色の思い出とともに《第四話 D》
しかし、そんな俺たちに問題が起きた。真菜が、告白されたのだ。


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「甘い!」
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俺と真菜が出会ったのは高校1年の夏。暑い日だった。
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「すみません!その傘、一緒に入れて下さい!」と急に女の子が少しぶつかり気味に入ってきた。
「おーっとっと…えっ!なに?」
「今日、雨の予報なんてなかったよね。あーこんなに濡れちゃったー」
「あっ、このハンカチ使います?」
「ありがとう……これって相合い傘ですよねー。少しドキドキしますね。しませんか?」
「いや、まあー」
「いつもバスで本読んでますよね!どんな本を読んでるんですか?」
「いや、まあー……」

それが真菜と俺の最初の出会いだった。

《第三話 C》(筆者 恒李)
傘で覆われる空間は一種のパーソナルスペースだと考えている。そこへ名前も知らない人がいきなり侵入してくるわけだ。普通は嫌悪感を抱くだろう。しかしその悪意の無い強引さと笑顔に負け、このくらいいいかと寛容になる。

「今日は本読まないの?」
バスまでの道のりで同じ学年であることを知り、敬語が外れた口調で覗き込むように訊いてくる。座る気のなかった二人席に腰掛けてるから距離が近い。
「もうぜんぶ読み終わったし、新しいの買おうと思う」
「へぇ、じゃあ今日はお喋りできるね」
横を見ると、目を細めて柔らかく笑うその子がいた。雨に濡れ、いくつもの小さな束を作る前髪が、その笑顔のアクセントになっているように思えた。


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みんなで繋ぐ物語(RWY)《第四話 E》

「はて、また鬼が悪さしとるんか?そないなことは何も聞いとらんが……わしが知らんだけかのう」
おじいさんは自慢の髭を撫でながら首を傾げました。

ポチは何も言わず、辺りを見渡しました。
すると、遠くの方から、誰かの叫び声が聞こえてくるではありませんか。

筆者 トム助



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◆みんなで繋ぐ物語(RWY)《第五話 D》
「なんじゃ、なんじゃ!?」おじいさんが声のする方に歩いていくと……


【ここまでのストーリー】

《第一話》(筆者 虹若丸)
昔、昔、あるところにおじいさんとおばあさんとポチが住んでいました!
ある日、おじいさんは海へ釣りに出かけました・・・。

《第二話 A》(筆者 ミミ子ちぶちぶ隊番犬)
おばあさんから
「おじいさん ポチも釣りに連れて行ってください。散歩兼お供に。」と言われました。
大きなおにぎり2つを腰につけ出発〜♪

《第三話 B》(筆者 新参者)
おじいさんとポチは釣竿片手に歩き始めました。海に着くと向こう側に鬼ヶ島が見えます。
あれはかつて桃太郎が退治したという鬼が住まう島です。
ポチは言いました。

「おじいさん!あと犬とキジがいれば鬼退治ができるね!」

なんと!ポチはおさるさんだったのです!

《第四話 E》(筆者 トム助
「はて、また鬼が悪さしとるんか?そないなことは何も聞いとらんが……わしが知らんだけかのう」
おじいさんは自慢の髭を撫でながら首を傾げました。

ポチは何も言わず、辺りを見渡しました。
すると、遠くの方から、誰かの叫び声が聞こえてくるではありませんか。


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未来から来た女の子《第五話 B》

ー翌朝
「う〜ん。アルバイト」
そう寝ぼけて言ったが、解雇された今、行く必要はないのだった。

「はあ。朝ご飯…」
「あ、沙織さん!おはようございます」

ん?そういえば、ルカちゃんがいるんだった。

「朝ご飯、できてますよ!」
「へ?」
「こっち、来てください」

ルカちゃんに手を引かれ、机の前に座る。そして、机の上には、綺麗に作られた目玉焼き、チーズトースト、トマトスープが並べられていた。

「これ、ルカちゃんが作ったの?」
「そうですよ!現代のご飯を頑張って勉強してきたんです」
「…。すご、い、ね」

料理下手な私じゃ、とてもこんな料理は作れないよ。いつも、朝ご飯は惣菜パンですましてるからね。よし、決めた。ここに居てもらおう。短い間でもいいから、ご飯を作ってもらえるのは助かる。宿題を手伝う代わりに、作ってもらうんだ。

「ルカちゃん。お願いがあります」
「はい!な、なんですか?」
「宿題を手伝う。その代わりに、ここにいる間、ご飯を作って欲しい」

…。あれ?返事が、ない。

「もちろん。作ります。それ以外のこともやります。ただ、宿題はとっても大変です。沙織さんも頑張ってください」
「え?大変、なの?」
「今更取り消せませんからね。明日から早速手伝ってもらいます」

なんか、嫌な、予感が。したり、しなかったり?

筆者 キスケ



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【ここまでのストーリー】

《第一話》(筆者 Saki)
「ごめんね…、うち今、厳しくて。」
3年勤めたファミレスは、そんな言葉であっさり解雇された。
小野沙織、28歳。
これからどうしよう。
私って何にもないんだよな…
都心から電車で30分。
大田区蒲田にある古いワンルームマンション。
私はここでずっと一人なんだろうか…
二階の部屋を見上げた。
あれ?明かりがついてる。 
急いで階段を上がった。
「あ、お邪魔してます!」
ドアを開けると小さな女の子がベットからぴょこんと立ち上がった。
「私、ルカといいます。遠い未来から来ました。」

《第二話 B》 (筆者 Saorin)
遠い未来…!?
沙織はまじまじとそのルカと名乗る女の子を見た。
小学校高学年くらいの真面目そうな女の子である。
「あの、私、学校の夏休みの課題でここに来たんです。」
「課題?…課題って?」
「歴史上の有名な人物の若い頃について調べるというものです。」
有名な人物の若い頃…
今でもありそうな課題だ。
「それで、私は小野沙織さんついて調べることにしたんです。よろしくお願いします。」
…え?
歴史上の有名な人物って私?

《第三話 B》 (筆者 らた)
「夏休みって、今冬…」
「だって未来から来たんですもん」
「そっか…」
 明らかにおかしい状況だけど否定できなかった。
 戸惑っている私に、ルカと名乗る女の子は笑顔で話し始めた。
「今って2022年ですよね。私は70年後、つまり2092年から来たんです。小野沙織さんは、2034年、つまり今から12年後にある偉業を成し遂げたんです」

《第四話 B》 (筆者 Kuuugle)
12年後って……40歳かー。
「もしかしてアイドル♡デビュー?」って歳じゃないし、「ママドル?」って偉業しなさそうだし、「マラソンランナー?」って走るの嫌いだし。勉強もスポーツも私って全部フツーなんだよなー。
「ルカちゃん、私が一体どんな偉業をするのか教えてよ」
「ダメです。歴史が変わっちゃいます」
「ねぇーちょっとだけ」
「ダメです」
「ルカさま~♡」
「ダメといったらダメです!」

ーーそして深夜。
「ルカちゃん、寝ちゃったか。まだ11歳の小学生だもんね……」明日からどんな生活になるのやら……。
沙織は今日の不思議な出来事をいつもの日記に綴り、ルカの隣で寝ることにした。

《第五話 B》 (筆者 キスケ)
ー翌朝
「う〜ん。アルバイト」
そう寝ぼけて言ったが、解雇された今、行く必要はないのだった。

「はあ。朝ご飯…」
「あ、沙織さん!おはようございます」

ん?そういえば、ルカちゃんがいるんだった。

「朝ご飯、できてますよ!」
「へ?」
「こっち、来てください」

ルカちゃんに手を引かれ、机の前に座る。そして、机の上には、綺麗に作られた目玉焼き、チーズトースト、トマトスープが並べられていた。

「これ、ルカちゃんが作ったの?」
「そうですよ!現代のご飯を頑張って勉強してきたんです」
「…。すご、い、ね」

料理下手な私じゃ、とてもこんな料理は作れないよ。いつも、朝ご飯は惣菜パンですましてるからね。よし、決めた。ここに居てもらおう。短い間でもいいから、ご飯を作ってもらえるのは助かる。宿題を手伝う代わりに、作ってもらうんだ。

「ルカちゃん。お願いがあります」
「はい!な、なんですか?」
「宿題を手伝う。その代わりに、ここにいる間、ご飯を作って欲しい」

…。あれ?返事が、ない。

「もちろん。作ります。それ以外のこともやります。ただ、宿題はとっても大変です。沙織さんも頑張ってください」
「え?大変、なの?」
「今更取り消せませんからね。明日から早速手伝ってもらいます」

なんか、嫌な、予感が。したり、しなかったり?


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