【青春小説】春色の思い出とともに《第五話 B》

西條の口調と視線にどう返すべきかと思慮し、口を開こうとした時だった。

「二人ともおまたせぇ!」
俺の後ろからした声は、俺たちだけに聞こえるようにおさえてはいるが明るく元気なハイトーン。俺はゆっくりと振り向くが、正面にいた西條の反応は早かった。

「真菜さん、ポニーテールも似合うね」
「えへへ。そうかな?」
真菜は嬉しそうに照れて前髪をちょいちょいといじる。確かにこれまでと違う雰囲気と西條に先制パンチをされたことで俺は止まってしまっていた。

「アキはどう思う?」
伺い込む仕草に艷やかな黒髪が揺れ、大きな瞳が俺を見つめてきて、俺は思わず視線を避けて用意していた机の上の資料を指差す。
「これがすごい似合いそうだな」
俺が誤魔化しに指さしたページを後ろから覗き込んできた。

筆者 宇水涼麻



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【ここまでのストーリー】

《第一話》(筆者 矢田川いつき)
「アキー! 一緒に帰ろー!」
放課後のチャイムと同時に、猪の如く向かってくる影がひとつ。
しかし俺は、それを華麗なステップでかわす。
「甘い!」
「わー! 避けないでー!」
ドシーン、と音を立てそうな勢いで彼女が転びそうになる……が、受け止めるまでが俺の役目。
「大丈夫か、真菜?」
「ありがと……って、誰のせいだと!」
「ハハハ」
何気ない、いつもの日常。
ずっと続くと、思ってた。
「帰るか」
「うん!」
俺らはもう……高校3年生だ。

《第二話 C》(筆者 suzu)
俺が真菜と初めて出会ったのは、高校に入学してから1週間くらいが経ったある日のこと。
各クラス全体を少人数で割り振り、レポート作成や校外探検などを行う、いわゆる課外活動。
「えー、それでは今から番号を振っていきます。自分と同じ番号の人とグループになってください!」
見るからに新人な男性教員が賑わう生徒達に声をかける。
俺はそれでも静寂にならない教室の様子に1つ息を吐き、窓際の席に座りながら風で宙を舞う桜の花びらを見つめていた。
「…重いな」
人見知りの部分がある俺にすると、正直レポートより気が重かった。友達からはそうは見えないと言われるけど、本当に苦手で。
グループワークなんて入学間もない時期はあるあるだと分かっていても、早く終わらないか考えてばかり。
数分後、俺は先生から5番という数字を言い渡され、仕方ないと言い聞かせて彼の合図でグループの人を探すことになった。
「あ、5番?」
「、ああ」
「よろしくな」
グループは全員で3人。まずは1人、隣のクラスの男子を見つける。
ーーすると、背後からツンツンと背中を突かれた。
「ねぇ、何番?」
「あ、俺は5番─…」
黒髪のセミロングに、パッチリとした瞳。一気に吸い込まれる。
「本当に?私も5番。一緒だ!」
それから放課後、図書室で一緒に資料を作ったり。発表の時には小さな声で打ち合わせをしたり。
端から見たら何ともない…どこにでもある景色だと思う。
「私は真菜。真菜で良いよ」
「…よろしく、真菜。俺は…アキ」
「アキ、よろしくね」
────でも、きっと俺は。
君がそう、俺に微笑んだあの瞬間から、始まっていたんだ。

《第三話 A》(筆者 物部木絹子)
「夏目さんって可愛いよな。」
「……そうか? 別に普通じゃね?」
 俺は一瞬、心の奥を見透かされたような気がして気づけば思ってもいない返答をしていた。
 放課後の図書室、今は同じ5番グループの西條 誠(さいじょう まこと)と2人で課題の【戦国武将の愛したファッション】で集めた資料を前に話し合いをしていたところだ。

《第四話 A》(筆者 物部木絹子)
西條はメモ書きしていたシャープペンシルを机にコトリ、と置く。

「俺さ、実は夏目……真菜さんのこと、好きでさ。コクろうかと思ってたんだ。けど、冬島くん、何だか彼女に気がありそうだったからぶっちゃけ引っかかってて……本当に彼女の事、何とも思ってないの?」

そう言いこちらを真っ直ぐ見つめる西條の瞳は澄んでいたのだが、どこか挑発を含んでいるようにも感じられた。

(何とも思ってないわけないだろ、一目惚れしたんだ)

《第五話 B》(筆者 宇水涼麻)
西條の口調と視線にどう返すべきかと思慮し、口を開こうとした時だった。

「二人ともおまたせぇ!」
俺の後ろからした声は、俺たちだけに聞こえるようにおさえてはいるが明るく元気なハイトーン。俺はゆっくりと振り向くが、正面にいた西條の反応は早かった。

「真菜さん、ポニーテールも似合うね」
「えへへ。そうかな?」
真菜は嬉しそうに照れて前髪をちょいちょいといじる。確かにこれまでと違う雰囲気と西條に先制パンチをされたことで俺は止まってしまっていた。

「アキはどう思う?」
伺い込む仕草に艷やかな黒髪が揺れ、大きな瞳が俺を見つめてきて、俺は思わず視線を避けて用意していた机の上の資料を指差す。
「これがすごい似合いそうだな」
俺が誤魔化しに指さしたページを後ろから覗き込んできた。


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