【青春小説】春色の思い出とともに《第四話 E》

そんな屈託のない彼女の笑顔に、見惚れてしまっている自分がいた。
「ん?何かついてる?」
思わずスマホの画面に自分の顔を写して確認する彼女。
「あ、いや、濡れて寒くないかなって思って」
俺は見惚れていたことをごまかすために、とっさの一言を放った。
「心配してくれてる?キミが傘に入れてくれたから大丈夫だよ」
ごまかせてはいたようだが、ニコニコと喋る彼女と、席の近さも相まって俺は何だか気が気じゃない。
「ねえ、何組なの?あたしは3組」
「俺は1組」
「じゃあ担任市川先生でしょ?いいなー」
「何で?」
「だって市川先生優しそうじゃん。うちの太田なんて体育会系なもんだから暑苦しくて」
「ああ、確かに、いろいろとアツい人だよな太田先生は」
どぎまぎしながらも、他愛のない世間話をしている内に俺が降りるバス停に到着した。
「じゃあ、俺ここで降りるから」
「あ!待って!」
「ん?」
「名前、教えて」
「俺の?」
「そう。あたしは真菜」
「俺は、秋。秋って書いて『あきら』って読む」
「あきらくん、あきらくんだね。うん、覚えた、ありがと」
なぜか嬉しそうな彼女に手を振られ、俺も手を小さく振りながらバスを降りた。

筆者 ハザマ



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【ここまでのストーリー】

《第一話》(筆者 矢田川いつき)
「アキー! 一緒に帰ろー!」
放課後のチャイムと同時に、猪の如く向かってくる影がひとつ。
しかし俺は、それを華麗なステップでかわす。
「甘い!」
「わー! 避けないでー!」
ドシーン、と音を立てそうな勢いで彼女が転びそうになる……が、受け止めるまでが俺の役目。
「大丈夫か、真菜?」
「ありがと……って、誰のせいだと!」
「ハハハ」
何気ない、いつもの日常。
ずっと続くと、思ってた。
「帰るか」
「うん!」
俺らはもう……高校3年生だ。

《第二話 A》(筆者 ハニービースト)
俺と真菜が出会ったのは高校1年の夏。暑い日だった。
学校帰りにバス停に向かう途中、急な夕立ちに見舞われ折りたたみ傘を出すと…
「すみません!その傘、一緒に入れて下さい!」と急に女の子が少しぶつかり気味に入ってきた。
「おーっとっと…えっ!なに?」
「今日、雨の予報なんてなかったよね。あーこんなに濡れちゃったー」
「あっ、このハンカチ使います?」
「ありがとう……これって相合い傘ですよねー。少しドキドキしますね。しませんか?」
「いや、まあー」
「いつもバスで本読んでますよね!どんな本を読んでるんですか?」
「いや、まあー……」

それが真菜と俺の最初の出会いだった。

《第三話 C》(筆者 恒李)
傘で覆われる空間は一種のパーソナルスペースだと考えている。そこへ名前も知らない人がいきなり侵入してくるわけだ。普通は嫌悪感を抱くだろう。しかしその悪意の無い強引さと笑顔に負け、このくらいいいかと寛容になる。

「今日は本読まないの?」
バスまでの道のりで同じ学年であることを知り、敬語が外れた口調で覗き込むように訊いてくる。座る気のなかった二人席に腰掛けてるから距離が近い。
「もうぜんぶ読み終わったし、新しいの買おうと思う」
「へぇ、じゃあ今日はお喋りできるね」
横を見ると、目を細めて柔らかく笑うその子がいた。雨に濡れ、いくつもの小さな束を作る前髪が、その笑顔のアクセントになっているように思えた。

《第四話 E》(筆者 ハザマ)
そんな屈託のない彼女の笑顔に、見惚れてしまっている自分がいた。
「ん?何かついてる?」
思わずスマホの画面に自分の顔を写して確認する彼女。
「あ、いや、濡れて寒くないかなって思って」
俺は見惚れていたことをごまかすために、とっさの一言を放った。
「心配してくれてる?キミが傘に入れてくれたから大丈夫だよ」
ごまかせてはいたようだが、ニコニコと喋る彼女と、席の近さも相まって俺は何だか気が気じゃない。
「ねえ、何組なの?あたしは3組」
「俺は1組」
「じゃあ担任市川先生でしょ?いいなー」
「何で?」
「だって市川先生優しそうじゃん。うちの太田なんて体育会系なもんだから暑苦しくて」
「ああ、確かに、いろいろとアツい人だよな太田先生は」
どぎまぎしながらも、他愛のない世間話をしている内に俺が降りるバス停に到着した。
「じゃあ、俺ここで降りるから」
「あ!待って!」
「ん?」
「名前、教えて」
「俺の?」
「そう。あたしは真菜」
「俺は、秋。秋って書いて『あきら』って読む」
「あきらくん、あきらくんだね。うん、覚えた、ありがと」
なぜか嬉しそうな彼女に手を振られ、俺も手を小さく振りながらバスを降りた。


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【青春小説】春色の思い出とともに《第五話 B》

西條の口調と視線にどう返すべきかと思慮し、口を開こうとした時だった。

「二人ともおまたせぇ!」
俺の後ろからした声は、俺たちだけに聞こえるようにおさえてはいるが明るく元気なハイトーン。俺はゆっくりと振り向くが、正面にいた西條の反応は早かった。

「真菜さん、ポニーテールも似合うね」
「えへへ。そうかな?」
真菜は嬉しそうに照れて前髪をちょいちょいといじる。確かにこれまでと違う雰囲気と西條に先制パンチをされたことで俺は止まってしまっていた。

「アキはどう思う?」
伺い込む仕草に艷やかな黒髪が揺れ、大きな瞳が俺を見つめてきて、俺は思わず視線を避けて用意していた机の上の資料を指差す。
「これがすごい似合いそうだな」
俺が誤魔化しに指さしたページを後ろから覗き込んできた。

筆者 宇水涼麻



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【ここまでのストーリー】

《第一話》(筆者 矢田川いつき)
「アキー! 一緒に帰ろー!」
放課後のチャイムと同時に、猪の如く向かってくる影がひとつ。
しかし俺は、それを華麗なステップでかわす。
「甘い!」
「わー! 避けないでー!」
ドシーン、と音を立てそうな勢いで彼女が転びそうになる……が、受け止めるまでが俺の役目。
「大丈夫か、真菜?」
「ありがと……って、誰のせいだと!」
「ハハハ」
何気ない、いつもの日常。
ずっと続くと、思ってた。
「帰るか」
「うん!」
俺らはもう……高校3年生だ。

《第二話 C》(筆者 suzu)
俺が真菜と初めて出会ったのは、高校に入学してから1週間くらいが経ったある日のこと。
各クラス全体を少人数で割り振り、レポート作成や校外探検などを行う、いわゆる課外活動。
「えー、それでは今から番号を振っていきます。自分と同じ番号の人とグループになってください!」
見るからに新人な男性教員が賑わう生徒達に声をかける。
俺はそれでも静寂にならない教室の様子に1つ息を吐き、窓際の席に座りながら風で宙を舞う桜の花びらを見つめていた。
「…重いな」
人見知りの部分がある俺にすると、正直レポートより気が重かった。友達からはそうは見えないと言われるけど、本当に苦手で。
グループワークなんて入学間もない時期はあるあるだと分かっていても、早く終わらないか考えてばかり。
数分後、俺は先生から5番という数字を言い渡され、仕方ないと言い聞かせて彼の合図でグループの人を探すことになった。
「あ、5番?」
「、ああ」
「よろしくな」
グループは全員で3人。まずは1人、隣のクラスの男子を見つける。
ーーすると、背後からツンツンと背中を突かれた。
「ねぇ、何番?」
「あ、俺は5番─…」
黒髪のセミロングに、パッチリとした瞳。一気に吸い込まれる。
「本当に?私も5番。一緒だ!」
それから放課後、図書室で一緒に資料を作ったり。発表の時には小さな声で打ち合わせをしたり。
端から見たら何ともない…どこにでもある景色だと思う。
「私は真菜。真菜で良いよ」
「…よろしく、真菜。俺は…アキ」
「アキ、よろしくね」
────でも、きっと俺は。
君がそう、俺に微笑んだあの瞬間から、始まっていたんだ。

《第三話 A》(筆者 物部木絹子)
「夏目さんって可愛いよな。」
「……そうか? 別に普通じゃね?」
 俺は一瞬、心の奥を見透かされたような気がして気づけば思ってもいない返答をしていた。
 放課後の図書室、今は同じ5番グループの西條 誠(さいじょう まこと)と2人で課題の【戦国武将の愛したファッション】で集めた資料を前に話し合いをしていたところだ。

《第四話 A》(筆者 物部木絹子)
西條はメモ書きしていたシャープペンシルを机にコトリ、と置く。

「俺さ、実は夏目……真菜さんのこと、好きでさ。コクろうかと思ってたんだ。けど、冬島くん、何だか彼女に気がありそうだったからぶっちゃけ引っかかってて……本当に彼女の事、何とも思ってないの?」

そう言いこちらを真っ直ぐ見つめる西條の瞳は澄んでいたのだが、どこか挑発を含んでいるようにも感じられた。

(何とも思ってないわけないだろ、一目惚れしたんだ)

《第五話 B》(筆者 宇水涼麻)
西條の口調と視線にどう返すべきかと思慮し、口を開こうとした時だった。

「二人ともおまたせぇ!」
俺の後ろからした声は、俺たちだけに聞こえるようにおさえてはいるが明るく元気なハイトーン。俺はゆっくりと振り向くが、正面にいた西條の反応は早かった。

「真菜さん、ポニーテールも似合うね」
「えへへ。そうかな?」
真菜は嬉しそうに照れて前髪をちょいちょいといじる。確かにこれまでと違う雰囲気と西條に先制パンチをされたことで俺は止まってしまっていた。

「アキはどう思う?」
伺い込む仕草に艷やかな黒髪が揺れ、大きな瞳が俺を見つめてきて、俺は思わず視線を避けて用意していた机の上の資料を指差す。
「これがすごい似合いそうだな」
俺が誤魔化しに指さしたページを後ろから覗き込んできた。


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【青春小説】春色の思い出とともに《第四話 D》

しかし、そんな俺たちに問題が起きた。
真菜が、告白されたのだ。
しかも、学校1のイケメン人気者、実家が資産家で御曹司の坂口ルカに。
もちろん真菜は付き合った。
元々真菜は学校のマドンナだし、いわゆる美少女っていう分類に属していた。
あの2人はお似合いだ。
そう俺は思って、トボトボと通学路を歩いていたら…。
「空(アキ)くん!?」
後ろから、懐かしくて、可憐な声がした。
そこにはー。

筆者 Coconuts



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《第一話》(筆者 矢田川いつき)
「アキー! 一緒に帰ろー!」
放課後のチャイムと同時に、猪の如く向かってくる影がひとつ。
しかし俺は、それを華麗なステップでかわす。
「甘い!」
「わー! 避けないでー!」
ドシーン、と音を立てそうな勢いで彼女が転びそうになる……が、受け止めるまでが俺の役目。
「大丈夫か、真菜?」
「ありがと……って、誰のせいだと!」
「ハハハ」
何気ない、いつもの日常。
ずっと続くと、思ってた。
「帰るか」
「うん!」
俺らはもう……高校3年生だ。

《第二話 A》(筆者 ハニービースト)
俺と真菜が出会ったのは高校1年の夏。暑い日だった。
学校帰りにバス停に向かう途中、急な夕立ちに見舞われ折りたたみ傘を出すと…
「すみません!その傘、一緒に入れて下さい!」と急に女の子が少しぶつかり気味に入ってきた。
「おーっとっと…えっ!なに?」
「今日、雨の予報なんてなかったよね。あーこんなに濡れちゃったー」
「あっ、このハンカチ使います?」
「ありがとう……これって相合い傘ですよねー。少しドキドキしますね。しませんか?」
「いや、まあー」
「いつもバスで本読んでますよね!どんな本を読んでるんですか?」
「いや、まあー……」

それが真菜と俺の最初の出会いだった。

《第三話 C》(筆者 恒李)
傘で覆われる空間は一種のパーソナルスペースだと考えている。そこへ名前も知らない人がいきなり侵入してくるわけだ。普通は嫌悪感を抱くだろう。しかしその悪意の無い強引さと笑顔に負け、このくらいいいかと寛容になる。

「今日は本読まないの?」
バスまでの道のりで同じ学年であることを知り、敬語が外れた口調で覗き込むように訊いてくる。座る気のなかった二人席に腰掛けてるから距離が近い。
「もうぜんぶ読み終わったし、新しいの買おうと思う」
「へぇ、じゃあ今日はお喋りできるね」
横を見ると、目を細めて柔らかく笑うその子がいた。雨に濡れ、いくつもの小さな束を作る前髪が、その笑顔のアクセントになっているように思えた。

《第四話 D》(筆者 Coconuts)
しかし、そんな俺たちに問題が起きた。
真菜が、告白されたのだ。
しかも、学校1のイケメン人気者、実家が資産家で御曹司の坂口ルカに。
もちろん真菜は付き合った。
元々真菜は学校のマドンナだし、いわゆる美少女っていう分類に属していた。
あの2人はお似合いだ。
そう俺は思って、トボトボと通学路を歩いていたら…。
「空(アキ)くん!?」
後ろから、懐かしくて、可憐な声がした。
そこにはー。


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【青春小説】春色の思い出とともに《第六話 A》

「……そうなんだ!」
 自分でも言い方がぎこちなかったとは感じたけれど、向こうにも何となく気まずい空気は伝わってたみたいで少しの間言葉を探す彼女との間に沈黙が流れる。
「……俺、事故に遭ってさ、昨年の5月。軽く走ったりは平気なんだけど部活でやるってなったらちょっと厳しい、的なこと言われちゃって。」
 ペラペラ暴露してしまう自分が他人のように思えた。でも何だか 

『どうして?』

 先にそう訊かれるのが矢鱈に怖かったのだ。

筆者 物部木絹子



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【ここまでのストーリー】

《第一話》(筆者 矢田川いつき)
「アキー! 一緒に帰ろー!」
放課後のチャイムと同時に、猪の如く向かってくる影がひとつ。
しかし俺は、それを華麗なステップでかわす。
「甘い!」
「わー! 避けないでー!」
ドシーン、と音を立てそうな勢いで彼女が転びそうになる……が、受け止めるまでが俺の役目。
「大丈夫か、真菜?」
「ありがと……って、誰のせいだと!」
「ハハハ」
何気ない、いつもの日常。
ずっと続くと、思ってた。
「帰るか」
「うん!」
俺らはもう……高校3年生だ。

《第二話 A》(筆者 ハニービースト)
俺と真菜が出会ったのは高校1年の夏。暑い日だった。
学校帰りにバス停に向かう途中、急な夕立ちに見舞われ折りたたみ傘を出すと…
「すみません!その傘、一緒に入れて下さい!」と急に女の子が少しぶつかり気味に入ってきた。
「おーっとっと…えっ!なに?」
「今日、雨の予報なんてなかったよね。あーこんなに濡れちゃったー」
「あっ、このハンカチ使います?」
「ありがとう……これって相合い傘ですよねー。少しドキドキしますね。しませんか?」
「いや、まあー」
「いつもバスで本読んでますよね!どんな本を読んでるんですか?」
「いや、まあー……」

それが真菜と俺の最初の出会いだった。

《第三話 C》(筆者 恒李)
傘で覆われる空間は一種のパーソナルスペースだと考えている。そこへ名前も知らない人がいきなり侵入してくるわけだ。普通は嫌悪感を抱くだろう。しかしその悪意の無い強引さと笑顔に負け、このくらいいいかと寛容になる。

「今日は本読まないの?」
バスまでの道のりで同じ学年であることを知り、敬語が外れた口調で覗き込むように訊いてくる。座る気のなかった二人席に腰掛けてるから距離が近い。
「もうぜんぶ読み終わったし、新しいの買おうと思う」
「へぇ、じゃあ今日はお喋りできるね」
横を見ると、目を細めて柔らかく笑うその子がいた。雨に濡れ、いくつもの小さな束を作る前髪が、その笑顔のアクセントになっているように思えた。

《第四話 C》(筆者 熊倉恋太郎)
「ね、ね。引き締まった体してるけどさ、もしかして何か運動とかしてるの?」
純粋な興味からの質問だろう。髪を貸したハンカチで拭いながら、間を持たせるためにという意味合いもあるかもしれない。
「いや、今は特に……」
「むー……さっきからそうやって適当な返事ばっかり……」
傘を少し引っ張る少女。急な動きにバランスを崩された俺は、1歩彼女の方へ寄ってしまう。

《第五話 A》(筆者 熊倉恋太郎)
「ちゃんと私の目を見て、答えてください!」
わざとらしい敬語と強めにした語気で、俺に問う。
雨の中でも負けることのない女の子特有の甘い香りが目の前にあり、心臓が大きく揺れる。
「むー……」
俺の事をじっと見つめてくる。
そんな可愛らしい姿に負けてしまった俺は、名前すらも知らない人に、これまで封じ込めていた言葉を漏らしてしまった。
「昔……サッカーをやってたんだ」

《第六話 A》(筆者 物部木絹子)

「……そうなんだ!」
 自分でも言い方がぎこちなかったとは感じたけれど、向こうにも何となく気まずい空気は伝わってたみたいで少しの間言葉を探す彼女との間に沈黙が流れる。
「……俺、事故に遭ってさ、昨年の5月。軽く走ったりは平気なんだけど部活でやるってなったらちょっと厳しい、的なこと言われちゃって。」
 ペラペラ暴露してしまう自分が他人のように思えた。でも何だか 

『どうして?』

 先にそう訊かれるのが矢鱈に怖かったのだ。


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【青春小説】春色の思い出とともに《第五話 A》

「ちゃんと私の目を見て、答えてください!」
わざとらしい敬語と強めにした語気で、俺に問う。
雨の中でも負けることのない女の子特有の甘い香りが目の前にあり、心臓が大きく揺れる。
「むー……」
俺の事をじっと見つめてくる。
そんな可愛らしい姿に負けてしまった俺は、名前すらも知らない人に、これまで封じ込めていた言葉を漏らしてしまった。
「昔……サッカーをやってたんだ」

筆者 熊倉恋太郎



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◆【青春小説】春色の思い出とともに《第六話 A》
「……そうなんだ!」 自分でも言い方がぎこちなかったとは感じたけれど、


【ここまでのストーリー】

《第一話》(筆者 矢田川いつき)
「アキー! 一緒に帰ろー!」
放課後のチャイムと同時に、猪の如く向かってくる影がひとつ。
しかし俺は、それを華麗なステップでかわす。
「甘い!」
「わー! 避けないでー!」
ドシーン、と音を立てそうな勢いで彼女が転びそうになる……が、受け止めるまでが俺の役目。
「大丈夫か、真菜?」
「ありがと……って、誰のせいだと!」
「ハハハ」
何気ない、いつもの日常。
ずっと続くと、思ってた。
「帰るか」
「うん!」
俺らはもう……高校3年生だ。

《第二話 A》(筆者 ハニービースト)
俺と真菜が出会ったのは高校1年の夏。暑い日だった。
学校帰りにバス停に向かう途中、急な夕立ちに見舞われ折りたたみ傘を出すと…
「すみません!その傘、一緒に入れて下さい!」と急に女の子が少しぶつかり気味に入ってきた。
「おーっとっと…えっ!なに?」
「今日、雨の予報なんてなかったよね。あーこんなに濡れちゃったー」
「あっ、このハンカチ使います?」
「ありがとう……これって相合い傘ですよねー。少しドキドキしますね。しませんか?」
「いや、まあー」
「いつもバスで本読んでますよね!どんな本を読んでるんですか?」
「いや、まあー……」

それが真菜と俺の最初の出会いだった。

《第三話 C》(筆者 恒李)
傘で覆われる空間は一種のパーソナルスペースだと考えている。そこへ名前も知らない人がいきなり侵入してくるわけだ。普通は嫌悪感を抱くだろう。しかしその悪意の無い強引さと笑顔に負け、このくらいいいかと寛容になる。

「今日は本読まないの?」
バスまでの道のりで同じ学年であることを知り、敬語が外れた口調で覗き込むように訊いてくる。座る気のなかった二人席に腰掛けてるから距離が近い。
「もうぜんぶ読み終わったし、新しいの買おうと思う」
「へぇ、じゃあ今日はお喋りできるね」
横を見ると、目を細めて柔らかく笑うその子がいた。雨に濡れ、いくつもの小さな束を作る前髪が、その笑顔のアクセントになっているように思えた。

《第四話 C》(筆者 熊倉恋太郎)
「ね、ね。引き締まった体してるけどさ、もしかして何か運動とかしてるの?」
純粋な興味からの質問だろう。髪を貸したハンカチで拭いながら、間を持たせるためにという意味合いもあるかもしれない。
「いや、今は特に……」
「むー……さっきからそうやって適当な返事ばっかり……」
傘を少し引っ張る少女。急な動きにバランスを崩された俺は、1歩彼女の方へ寄ってしまう。

《第五話 A》(筆者 熊倉恋太郎)
「ちゃんと私の目を見て、答えてください!」
わざとらしい敬語と強めにした語気で、俺に問う。
雨の中でも負けることのない女の子特有の甘い香りが目の前にあり、心臓が大きく揺れる。
「むー……」
俺の事をじっと見つめてくる。
そんな可愛らしい姿に負けてしまった俺は、名前すらも知らない人に、これまで封じ込めていた言葉を漏らしてしまった。
「昔……サッカーをやってたんだ」


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【青春小説】春色の思い出とともに《第四話 C》

「ね、ね。引き締まった体してるけどさ、もしかして何か運動とかしてるの?」
純粋な興味からの質問だろう。髪を貸したハンカチで拭いながら、間を持たせるためにという意味合いもあるかもしれない。
「いや、今は特に……」
「むー……さっきからそうやって適当な返事ばっかり……」
傘を少し引っ張る少女。急な動きにバランスを崩された俺は、1歩彼女の方へ寄ってしまう。

筆者 熊倉恋太郎



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「ちゃんと私の目を見て、答えてください!」


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「アキー! 一緒に帰ろー!」
放課後のチャイムと同時に、猪の如く向かってくる影がひとつ。
しかし俺は、それを華麗なステップでかわす。
「甘い!」
「わー! 避けないでー!」
ドシーン、と音を立てそうな勢いで彼女が転びそうになる……が、受け止めるまでが俺の役目。
「大丈夫か、真菜?」
「ありがと……って、誰のせいだと!」
「ハハハ」
何気ない、いつもの日常。
ずっと続くと、思ってた。
「帰るか」
「うん!」
俺らはもう……高校3年生だ。

《第二話 A》(筆者 ハニービースト)
俺と真菜が出会ったのは高校1年の夏。暑い日だった。
学校帰りにバス停に向かう途中、急な夕立ちに見舞われ折りたたみ傘を出すと…
「すみません!その傘、一緒に入れて下さい!」と急に女の子が少しぶつかり気味に入ってきた。
「おーっとっと…えっ!なに?」
「今日、雨の予報なんてなかったよね。あーこんなに濡れちゃったー」
「あっ、このハンカチ使います?」
「ありがとう……これって相合い傘ですよねー。少しドキドキしますね。しませんか?」
「いや、まあー」
「いつもバスで本読んでますよね!どんな本を読んでるんですか?」
「いや、まあー……」

それが真菜と俺の最初の出会いだった。

《第三話 C》(筆者 恒李)
傘で覆われる空間は一種のパーソナルスペースだと考えている。そこへ名前も知らない人がいきなり侵入してくるわけだ。普通は嫌悪感を抱くだろう。しかしその悪意の無い強引さと笑顔に負け、このくらいいいかと寛容になる。

「今日は本読まないの?」
バスまでの道のりで同じ学年であることを知り、敬語が外れた口調で覗き込むように訊いてくる。座る気のなかった二人席に腰掛けてるから距離が近い。
「もうぜんぶ読み終わったし、新しいの買おうと思う」
「へぇ、じゃあ今日はお喋りできるね」
横を見ると、目を細めて柔らかく笑うその子がいた。雨に濡れ、いくつもの小さな束を作る前髪が、その笑顔のアクセントになっているように思えた。

《第四話 C》(筆者 熊倉恋太郎)
「ね、ね。引き締まった体してるけどさ、もしかして何か運動とかしてるの?」
純粋な興味からの質問だろう。髪を貸したハンカチで拭いながら、間を持たせるためにという意味合いもあるかもしれない。
「いや、今は特に……」
「むー……さっきからそうやって適当な返事ばっかり……」
傘を少し引っ張る少女。急な動きにバランスを崩された俺は、1歩彼女の方へ寄ってしまう。


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【青春小説】春色の思い出とともに《第四話 B》

「進路、決まってる?」
ハンカチで髪をふく彼女に話しかける。独り言みたいな声量で。
彼女が、ピタリと手を止めた。
「アキは?」
「質問を質問で返すな!」
軽く肩をはたいた。いつものように二人で笑う。なんてことはなく、いつになく重い空気がながれている。
「アキ、は?」
もう一度、彼女が、真菜が聞く。
答えられない。
「まあ、私から言わなきゃだよね」
珍しく苦笑いを浮かべる真菜。
「アキ、読み終わった本は面白かった?」
急に何で本の話。
「あれ、書いてるの私。初めて会った時に読んでたのも」
それは、え?どういう。
「私、小説家なんだ。」
理解が追いつかなかった。

筆者 多菓子



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「アキー! 一緒に帰ろー!」
放課後のチャイムと同時に、猪の如く向かってくる影がひとつ。
しかし俺は、それを華麗なステップでかわす。
「甘い!」
「わー! 避けないでー!」
ドシーン、と音を立てそうな勢いで彼女が転びそうになる……が、受け止めるまでが俺の役目。
「大丈夫か、真菜?」
「ありがと……って、誰のせいだと!」
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何気ない、いつもの日常。
ずっと続くと、思ってた。
「帰るか」
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《第二話 A》(筆者 ハニービースト)
俺と真菜が出会ったのは高校1年の夏。暑い日だった。
学校帰りにバス停に向かう途中、急な夕立ちに見舞われ折りたたみ傘を出すと…
「すみません!その傘、一緒に入れて下さい!」と急に女の子が少しぶつかり気味に入ってきた。
「おーっとっと…えっ!なに?」
「今日、雨の予報なんてなかったよね。あーこんなに濡れちゃったー」
「あっ、このハンカチ使います?」
「ありがとう……これって相合い傘ですよねー。少しドキドキしますね。しませんか?」
「いや、まあー」
「いつもバスで本読んでますよね!どんな本を読んでるんですか?」
「いや、まあー……」

それが真菜と俺の最初の出会いだった。

《第三話 C》(筆者 恒李)
傘で覆われる空間は一種のパーソナルスペースだと考えている。そこへ名前も知らない人がいきなり侵入してくるわけだ。普通は嫌悪感を抱くだろう。しかしその悪意の無い強引さと笑顔に負け、このくらいいいかと寛容になる。

「今日は本読まないの?」
バスまでの道のりで同じ学年であることを知り、敬語が外れた口調で覗き込むように訊いてくる。座る気のなかった二人席に腰掛けてるから距離が近い。
「もうぜんぶ読み終わったし、新しいの買おうと思う」
「へぇ、じゃあ今日はお喋りできるね」
横を見ると、目を細めて柔らかく笑うその子がいた。雨に濡れ、いくつもの小さな束を作る前髪が、その笑顔のアクセントになっているように思えた。

《第四話 B》(筆者 多菓子)
「進路、決まってる?」
ハンカチで髪をふく彼女に話しかける。独り言みたいな声量で。
彼女が、ピタリと手を止めた。
「アキは?」
「質問を質問で返すな!」
軽く肩をはたいた。いつものように二人で笑う。なんてことはなく、いつになく重い空気がながれている。
「アキ、は?」
もう一度、彼女が、真菜が聞く。
答えられない。
「まあ、私から言わなきゃだよね」
珍しく苦笑いを浮かべる真菜。
「アキ、読み終わった本は面白かった?」
急に何で本の話。
「あれ、書いてるの私。初めて会った時に読んでたのも」
それは、え?どういう。
「私、小説家なんだ。」
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傘で覆われる空間は一種のパーソナルスペースだと考えている。そこへ名前も知らない人がいきなり侵入してくるわけだ。普通は嫌悪感を抱くだろう。しかしその悪意の無い強引さと笑顔に負け、このくらいいいかと寛容になる。

「今日は本読まないの?」
バスまでの道のりで同じ学年であることを知り、敬語が外れた口調で覗き込むように訊いてくる。座る気のなかった二人席に腰掛けてるから距離が近い。
「もうぜんぶ読み終わったし、新しいの買おうと思う」
「へぇ、じゃあ今日はお喋りできるね」
横を見ると、目を細めて柔らかく笑うその子がいた。雨に濡れ、いくつもの小さな束を作る前髪が、その笑顔のアクセントになっているように思えた。

筆者 恒李



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【ここまでのストーリー】

《第一話》(筆者 矢田川いつき)
「アキー! 一緒に帰ろー!」
放課後のチャイムと同時に、猪の如く向かってくる影がひとつ。
しかし俺は、それを華麗なステップでかわす。
「甘い!」
「わー! 避けないでー!」
ドシーン、と音を立てそうな勢いで彼女が転びそうになる……が、受け止めるまでが俺の役目。
「大丈夫か、真菜?」
「ありがと……って、誰のせいだと!」
「ハハハ」
何気ない、いつもの日常。
ずっと続くと、思ってた。
「帰るか」
「うん!」
俺らはもう……高校3年生だ。

《第二話 A》(筆者 ハニービースト)
俺と真菜が出会ったのは高校1年の夏。暑い日だった。
学校帰りにバス停に向かう途中、急な夕立ちに見舞われ折りたたみ傘を出すと…
「すみません!その傘、一緒に入れて下さい!」と急に女の子が少しぶつかり気味に入ってきた。
「おーっとっと…えっ!なに?」
「今日、雨の予報なんてなかったよね。あーこんなに濡れちゃったー」
「あっ、このハンカチ使います?」
「ありがとう……これって相合い傘ですよねー。少しドキドキしますね。しませんか?」
「いや、まあー」
「いつもバスで本読んでますよね!どんな本を読んでるんですか?」
「いや、まあー……」

それが真菜と俺の最初の出会いだった。

《第三話 C》(筆者 恒李)
傘で覆われる空間は一種のパーソナルスペースだと考えている。そこへ名前も知らない人がいきなり侵入してくるわけだ。普通は嫌悪感を抱くだろう。しかしその悪意の無い強引さと笑顔に負け、このくらいいいかと寛容になる。

「今日は本読まないの?」
バスまでの道のりで同じ学年であることを知り、敬語が外れた口調で覗き込むように訊いてくる。座る気のなかった二人席に腰掛けてるから距離が近い。
「もうぜんぶ読み終わったし、新しいの買おうと思う」
「へぇ、じゃあ今日はお喋りできるね」
横を見ると、目を細めて柔らかく笑うその子がいた。雨に濡れ、いくつもの小さな束を作る前髪が、その笑顔のアクセントになっているように思えた。


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  • 一話あたりの文字数は50~200文字までとしてください。200文字を超える場合は、次話として投稿してください。

【青春小説】春色の思い出とともに《第三話 B》

課外活動のグループで真菜と知り合ってから数ヶ月。特に切り取って挙げるほどの出来事はなかった。
人見知りでなかなか友達が増えない俺とは対照的に、真菜は天真爛漫な性格で、ありきたりな言葉だけどいつもクラスの中心にいるような人だった。それでもグループ活動が一緒で何度も話した事があるからか、休み時間とかにはよく話しかけに来てくれた。
当の俺はと言うと、この時はまだ真菜の方から来てくれるのを楽しみにしていただけだった。
変化が起きたのは、夏休みのある日だった。

筆者 とうまらた



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【ここまでのストーリー】

第一話》(筆者 矢田川いつき)
「アキー! 一緒に帰ろー!」
放課後のチャイムと同時に、猪の如く向かってくる影がひとつ。
しかし俺は、それを華麗なステップでかわす。
「甘い!」
「わー! 避けないでー!」
ドシーン、と音を立てそうな勢いで彼女が転びそうになる……が、受け止めるまでが俺の役目。
「大丈夫か、真菜?」
「ありがと……って、誰のせいだと!」
「ハハハ」
何気ない、いつもの日常。
ずっと続くと、思ってた。
「帰るか」
「うん!」
俺らはもう……高校3年生だ。

第二話 C》(筆者 suzu)
俺が真菜と初めて出会ったのは、高校に入学してから1週間くらいが経ったある日のこと。
各クラス全体を少人数で割り振り、レポート作成や校外探検などを行う、いわゆる課外活動。
「えー、それでは今から番号を振っていきます。自分と同じ番号の人とグループになってください!」
見るからに新人な男性教員が賑わう生徒達に声をかける。
俺はそれでも静寂にならない教室の様子に1つ息を吐き、窓際の席に座りながら風で宙を舞う桜の花びらを見つめていた。
「…重いな」
人見知りの部分がある俺にすると、正直レポートより気が重かった。友達からはそうは見えないと言われるけど、本当に苦手で。
グループワークなんて入学間もない時期はあるあるだと分かっていても、早く終わらないか考えてばかり。
数分後、俺は先生から5番という数字を言い渡され、仕方ないと言い聞かせて彼の合図でグループの人を探すことになった。
「あ、5番?」
「、ああ」
「よろしくな」
グループは全員で3人。まずは1人、隣のクラスの男子を見つける。
ーーすると、背後からツンツンと背中を突かれた。
「ねぇ、何番?」
「あ、俺は5番─…」
黒髪のセミロングに、パッチリとした瞳。一気に吸い込まれる。
「本当に?私も5番。一緒だ!」
それから放課後、図書室で一緒に資料を作ったり。発表の時には小さな声で打ち合わせをしたり。
端から見たら何ともない…どこにでもある景色だと思う。
「私は真菜。真菜で良いよ」
「…よろしく、真菜。俺は…アキ」
「アキ、よろしくね」
────でも、きっと俺は。
君がそう、俺に微笑んだあの瞬間から、始まっていたんだ。

《第三話 B》(筆者 とうまらた)
課外活動のグループで真菜と知り合ってから数ヶ月。特に切り取って挙げるほどの出来事はなかった。
人見知りでなかなか友達が増えない俺とは対照的に、真菜は天真爛漫な性格で、ありきたりな言葉だけどいつもクラスの中心にいるような人だった。それでもグループ活動が一緒で何度も話した事があるからか、休み時間とかにはよく話しかけに来てくれた。
当の俺はと言うと、この時はまだ真菜の方から来てくれるのを楽しみにしていただけだった。
変化が起きたのは、夏休みのある日だった。


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【青春小説】春色の思い出とともに《第四話 A》

西條はメモ書きしていたシャープペンシルを机にコトリ、と置く。

「俺さ、実は夏目……真菜さんのこと、好きでさ。コクろうかと思ってたんだ。けど、冬島くん、何だか彼女に気がありそうだったからぶっちゃけ引っかかってて……本当に彼女の事、何とも思ってないの?」

そう言いこちらを真っ直ぐ見つめる西條の瞳は澄んでいたのだが、どこか挑発を含んでいるようにも感じられた。

(何とも思ってないわけないだろ、一目惚れしたんだ)

筆者 物部木絹子



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◆【青春小説】春色の思い出とともに《第五話 B》
西條の口調と視線にどう返すべきかと思慮し、口を開こうとした時だった。


【ここまでのストーリー】

《第一話》(筆者 矢田川いつき)
「アキー! 一緒に帰ろー!」
放課後のチャイムと同時に、猪の如く向かってくる影がひとつ。
しかし俺は、それを華麗なステップでかわす。
「甘い!」
「わー! 避けないでー!」
ドシーン、と音を立てそうな勢いで彼女が転びそうになる……が、受け止めるまでが俺の役目。
「大丈夫か、真菜?」
「ありがと……って、誰のせいだと!」
「ハハハ」
何気ない、いつもの日常。
ずっと続くと、思ってた。
「帰るか」
「うん!」
俺らはもう……高校3年生だ。

《第二話 C》(筆者 suzu)
俺が真菜と初めて出会ったのは、高校に入学してから1週間くらいが経ったある日のこと。
各クラス全体を少人数で割り振り、レポート作成や校外探検などを行う、いわゆる課外活動。
「えー、それでは今から番号を振っていきます。自分と同じ番号の人とグループになってください!」
見るからに新人な男性教員が賑わう生徒達に声をかける。
俺はそれでも静寂にならない教室の様子に1つ息を吐き、窓際の席に座りながら風で宙を舞う桜の花びらを見つめていた。
「…重いな」
人見知りの部分がある俺にすると、正直レポートより気が重かった。友達からはそうは見えないと言われるけど、本当に苦手で。
グループワークなんて入学間もない時期はあるあるだと分かっていても、早く終わらないか考えてばかり。
数分後、俺は先生から5番という数字を言い渡され、仕方ないと言い聞かせて彼の合図でグループの人を探すことになった。
「あ、5番?」
「、ああ」
「よろしくな」
グループは全員で3人。まずは1人、隣のクラスの男子を見つける。
ーーすると、背後からツンツンと背中を突かれた。
「ねぇ、何番?」
「あ、俺は5番─…」
黒髪のセミロングに、パッチリとした瞳。一気に吸い込まれる。
「本当に?私も5番。一緒だ!」
それから放課後、図書室で一緒に資料を作ったり。発表の時には小さな声で打ち合わせをしたり。
端から見たら何ともない…どこにでもある景色だと思う。
「私は真菜。真菜で良いよ」
「…よろしく、真菜。俺は…アキ」
「アキ、よろしくね」
────でも、きっと俺は。
君がそう、俺に微笑んだあの瞬間から、始まっていたんだ。

《第三話 A》(筆者 物部木絹子)
「夏目さんって可愛いよな。」
「……そうか? 別に普通じゃね?」
 俺は一瞬、心の奥を見透かされたような気がして気づけば思ってもいない返答をしていた。
 放課後の図書室、今は同じ5番グループの西條 誠(さいじょう まこと)と2人で課題の【戦国武将の愛したファッション】で集めた資料を前に話し合いをしていたところだ。

《第四話 A》(筆者 物部木絹子)
西條はメモ書きしていたシャープペンシルを机にコトリ、と置く。

「俺さ、実は夏目……真菜さんのこと、好きでさ。コクろうかと思ってたんだ。けど、冬島くん、何だか彼女に気がありそうだったからぶっちゃけ引っかかってて……本当に彼女の事、何とも思ってないの?」

そう言いこちらを真っ直ぐ見つめる西條の瞳は澄んでいたのだが、どこか挑発を含んでいるようにも感じられた。

(何とも思ってないわけないだろ、一目惚れしたんだ)


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