「って、誰だよこれ!」
2人の姉が写っていた筈の写真に代わりに写っていたのは、1度も会った事のない人物だった。
いったいなんだというんだ。先週からずっと、信じ難い事の連続じゃあないか。
己が頬が徐々に紅潮してゆくのが解り、焦る心が酷く急き立てられているという情けない現実を自分でもハッキリと認識する事ができた。
先週始め、長期旅行に出かけていた筈の長姉と次姉の部屋に撒き散らされていた何らかの獣の血痕。それを見つけ俺が啞然としている最中に、何者かが家に火を点けようとしている事に気づき、追いかけ、見失い諦めたところで長姉からスマホに着信が入り、「……私を、助けて。助けないと、ルクス……10日後、腕が失くなるよ」とだけ言い残し通話が途切れた。
直後に次姉からも着信が入り、ほぼ同じ内容で今度は「ルーちゃん足が失くなるよ」と言い残しこれも切れた。
で、俺はそれから走り屋仲間に声をかけ血眼になり姉達を捜索し、姉達の乗るお揃いのNinja e-1が階段横に停められている古いアパートを奇跡的に見つけたんだ。2階のベランダに姉の愛用の派手な洗車タオルが干されている事も確認した。
だが、運悪く知己の刑事と出くわし、よりにもよって下着泥棒の疑いをかけられ追いかけられる羽目になり、今に至る。
全ては普段の自分の悪業のせいなのだが、冤罪甚だしき状況にはほとほと嫌気が差していた。
と、刹那に、写真の中の2人の女がこちらを見やり口を動かした気がした。
「何だよ……」
思えば、何故俺はこんな写真を持っていたのだろう。
聞き込み用にと持ち歩いていた姉達の写真は、いくらポケットを探ろうと見つからない。
情報収集の為の大切な写真だ。
何処かで落としてしまったとでもいうのだろうか?
刑事が訝しげに俺に問いかけた。
「何だァ? 写真も盗品だってのか? まさかお前、自分が何処で何を盗ったのかすら覚えてないのかよ?」
「だからオッチャン! 俺は下着なんて盗らないって」
「ちげーよ。誰がいつ下着盗ったなんて言ったよ。俺がお前を追っているのは、別の物を盗ったからだろ?」
「何も盗ってねーよ! ……何も──ん? あれ? 何も、盗ってねーよ……な?」
「お前、思い出せねーの? 大丈夫か?」
頭に靄がかかり頭痛がする。
「思い出せないと──首が失くなるよ?」
刑事の頭がグルンと逆さまになった。
筆者 三日月月洞
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【ここまでのストーリー】
《第一話》(筆者 るくすすん)
梅雨入りしそうなじっとりとした真夜中
ひとりで単車を転がしていた
ふッとバックミラーをのぞき込むと
煌々と警察車両の赤色灯とサイレンが俺を追っていた
警察車両の1台が、拡声器を使い停止命令を訴えていた
『とまれ小僧!!!』
すごい剣幕で、俺の単車の後を追いかけてくる
素直に止まるはずもない
東京から神奈川に入る県境
多摩川の上を走り向ける
目の前に見えるのは川崎の高層ビル群と神奈川県警の交機
後方には蒲田警察
前方には神奈川県警の交機
多摩川の橋の上で赤色灯に囲まれ 絶体絶命!
しばらくすると逆車線の川崎方面から一台の軽自動車が上って来た
俺は賺さず、軽自動車が上って来た方向へハンドルを切り
アクセルを吹かした
まんまと警察車両をかわし武蔵小杉方面へ走り出す
後方からサイレンの音が聞こえるが追いつく感じはしなかった…
再び東京方面へ単車を走らせ、環八を抜け駒沢通りへ
呑川親水公園で単車を降りた。
すると、暗闇から3人の男達が現れ俺の名前を呼んだ!
アマモト ルクス
天本るくす 年は17歳 現役高校性
蒲田を流れる小汚い呑川近辺で育った
家族は大手企業に勤める父と貿易会社を営む母
兄弟は姉が2人(長女は23歳 次女は19歳の大学生)
俺は今日…次女の姉を助けにこの場所にやって来た…
《第二話 B》(筆者 ただの通りすがり)
勝手知ったる顔だ。やつらは警視庁第三課、窃盗事件を担当する刑事だ。
どうやら先回りしてきたようだ。
「お前がここに来ることは分かっている」と刑事のひとりが言った。
また俺の邪魔をしに来やがった。
一週間前もそうだった。
その時は長女の姉を助けるため、この場所に来た。姉が監禁されているアパートの2階の部屋に外から踏み込もうとベランダに手を掛けた時、やつらが現れた。
「窃盗未遂で逮捕する」俺は連行された。
今日は次女の姉を助けに来たのに・・・・
あの2階の部屋、ベランダに物干し竿がある部屋、あそこに姉が・・・・
刑事が言った。
「嘘を付くな。お前に姉などいない。また盗みに来たのか。
懲りない”妄想野郎”だ」
やつらは何をいっているのだ。俺は姉たちの写真を持っている。これが証拠だ!
手に持った写真には、楽しそうに食事する女性2人が写っている。
しかしそれはネット上に転がっているありふれた画像だった。
《第三話 C》(筆者 三日月月洞)
「って、誰だよこれ!」
2人の姉が写っていた筈の写真に代わりに写っていたのは、1度も会った事のない人物だった。
いったいなんだというんだ。先週からずっと、信じ難い事の連続じゃあないか。
己が頬が徐々に紅潮してゆくのが解り、焦る心が酷く急き立てられているという情けない現実を自分でもハッキリと認識する事ができた。
先週始め、長期旅行に出かけていた筈の長姉と次姉の部屋に撒き散らされていた何らかの獣の血痕。それを見つけ俺が啞然としている最中に、何者かが家に火を点けようとしている事に気づき、追いかけ、見失い諦めたところで長姉からスマホに着信が入り、「……私を、助けて。助けないと、ルクス……10日後、腕が失くなるよ」とだけ言い残し通話が途切れた。
直後に次姉からも着信が入り、ほぼ同じ内容で今度は「ルーちゃん足が失くなるよ」と言い残しこれも切れた。
で、俺はそれから走り屋仲間に声をかけ血眼になり姉達を捜索し、姉達の乗るお揃いのNinja e-1が階段横に停められている古いアパートを奇跡的に見つけたんだ。2階のベランダに姉の愛用の派手な洗車タオルが干されている事も確認した。
だが、運悪く知己の刑事と出くわし、よりにもよって下着泥棒の疑いをかけられ追いかけられる羽目になり、今に至る。
全ては普段の自分の悪業のせいなのだが、冤罪甚だしき状況にはほとほと嫌気が差していた。
と、刹那に、写真の中の2人の女がこちらを見やり口を動かした気がした。
「何だよ……」
思えば、何故俺はこんな写真を持っていたのだろう。
聞き込み用にと持ち歩いていた姉達の写真は、いくらポケットを探ろうと見つからない。
情報収集の為の大切な写真だ。
何処かで落としてしまったとでもいうのだろうか?
刑事が訝しげに俺に問いかけた。
「何だァ? 写真も盗品だってのか? まさかお前、自分が何処で何を盗ったのかすら覚えてないのかよ?」
「だからオッチャン! 俺は下着なんて盗らないって」
「ちげーよ。誰がいつ下着盗ったなんて言ったよ。俺がお前を追っているのは、別の物を盗ったからだろ?」
「何も盗ってねーよ! ……何も──ん? あれ? 何も、盗ってねーよ……な?」
「お前、思い出せねーの? 大丈夫か?」
頭に靄がかかり頭痛がする。
「思い出せないと──首が失くなるよ?」
刑事の頭がグルンと逆さまになった。
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