空気人形をつまみあげるようにして手に取ってみる。
人肌程度の硬度、精巧な骨組み。その他俺を欺くためだけに組まれたプログラムと、それを実行する鉄の塊。
安くもなさそうなそれがわざわざ破裂音をたてたあたり、俺をからかっているらしかった。
『…じゃあ、「本物」の姉貴は…?』
漏れた声は自分でも驚くほどか細く、言葉尻は鳴り響いたメール受信の通知音にかきけされた。
姉だったガラクタを放り捨てて、メールフォルダを開く。そこに意思はなく、ほとんど機械がプログラムを実行するのと同じだった。
«次もよろしくな»
何通目かも分からないそのメールを、溢れ出しそうなゴミ箱に押し込んだ。
筆者 イル
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【ここまでのストーリー】
《第一話》(筆者 るくすすん)
梅雨入りしそうなじっとりとした真夜中
ひとりで単車を転がしていた
ふッとバックミラーをのぞき込むと
煌々と警察車両の赤色灯とサイレンが俺を追っていた
警察車両の1台が、拡声器を使い停止命令を訴えていた
『とまれ小僧!!!』
すごい剣幕で、俺の単車の後を追いかけてくる
素直に止まるはずもない
東京から神奈川に入る県境
多摩川の上を走り向ける
目の前に見えるのは川崎の高層ビル群と神奈川県警の交機
後方には蒲田警察
前方には神奈川県警の交機
多摩川の橋の上で赤色灯に囲まれ 絶体絶命!
しばらくすると逆車線の川崎方面から一台の軽自動車が上って来た
俺は賺さず、軽自動車が上って来た方向へハンドルを切り
アクセルを吹かした
まんまと警察車両をかわし武蔵小杉方面へ走り出す
後方からサイレンの音が聞こえるが追いつく感じはしなかった…
再び東京方面へ単車を走らせ、環八を抜け駒沢通りへ
呑川親水公園で単車を降りた。
すると、暗闇から3人の男達が現れ俺の名前を呼んだ!
アマモト ルクス
天本るくす 年は17歳 現役高校性
蒲田を流れる小汚い呑川近辺で育った
家族は大手企業に勤める父と貿易会社を営む母
兄弟は姉が2人(長女は23歳 次女は19歳の大学生)
俺は今日…次女の姉を助けにこの場所にやって来た…
《第二話 A》(筆者 るくすすん)
『おい!るくす』
『久々だな』
声をかけてきた男の顔を睨め付けるように…うなずいた
『姉貴は無事なんだろうな?』
男が不機嫌そうに『安心しろよ 何もしてね~よ』
『ところで…例のモノは持ってきたんだろうな?』
俺はズボンのポケットに手を入れ、USBを出しながら
『姉貴と交換だろう』
男は護衛の二人にうなずき指示を出した
護衛の二人は、後ろに停めてあった車に向かい
るくすの姉を後部座席から降ろした
男が『お前の姉貴は無事だ、そのUSBを渡せ…』
るくす
『姉貴がこっちに来てからだ』
るくすが姉の腕をつかみ、単車の後ろに誘導した
護衛の二人は、男の方へ戻り
手に持っていたUSBを男の手のひらに渡した
男はすかさず、パソコンに刺しUSBの中身を確認した
俺は姉貴にヘルメットを渡し
姉貴はヘルメットをかぶり単車の後部座席に座った
男は『これだよ!これ!』
『コピーは取ってないだろうな?』
るくすは後部座席に座っている姉の様子の見ながら
『安心しろ そんな物に興味ね~よ』
男は『クスッ』と笑いながら護衛の二人に『帰るぞ』とつぶやき
車の方へ向かいはじめた
るくすは、姉に『大丈夫か?』と一言かけ
姉が『うん』とうなずいた
単車のエンジンをかけ、Lowにギアを入れ
男を背に走り出した…
呑川親水公園の交差点を走り抜けた時…
乾いた『パン』という音が聞こえ、姉が単車から転げ落ちた…
《第三話 A》(筆者 ただの通りすがり)
バイクを止め駆け寄ってみると、
そこには、ペッちゃんこになった姉が転がっていた。
『何だこれは!』
それは精巧に作られた空気人形だった。何かの弾みで空気が抜けたらしい。
手足の挙動、言葉までも発するようにプログラムされていたようだが、
空気が抜けた今となっては、ゴミ袋状態だった。
『畜生、騙された。』
(そのころ男たちは)
「あいつ今頃、また驚いているだろうな。相変わらず間抜けな野郎だ。この手を使うのは5回目だが、まだまだ使えそうだ。」
しかし妙な野郎だ。小学校の頃から知っているが、あいつに姉などいない。それでも姉を誘拐したと言えば、俺たちの推す地下アイドルの写真を撮ってきてくれる。
USBが刺さったパソコンには、アイドルの画像が写し出されていた。
ルクスのカメラの腕は確かだ。名前に明るさの単位を持つだけはある。それに何故か劇場にも顔パスらしい。
「さあーて、次はアミちゃんの写真でも撮ってきてもらおうか。また姉貴を誘拐したといって」
そういうと、男たちは『ニヤッ』と笑った。
《第四話 A》(筆者 イル)
空気人形をつまみあげるようにして手に取ってみる。
人肌程度の硬度、精巧な骨組み。その他俺を欺くためだけに組まれたプログラムと、それを実行する鉄の塊。
安くもなさそうなそれがわざわざ破裂音をたてたあたり、俺をからかっているらしかった。
『…じゃあ、「本物」の姉貴は…?』
漏れた声は自分でも驚くほどか細く、言葉尻は鳴り響いたメール受信の通知音にかきけされた。
姉だったガラクタを放り捨てて、メールフォルダを開く。そこに意思はなく、ほとんど機械がプログラムを実行するのと同じだった。
«次もよろしくな»
何通目かも分からないそのメールを、溢れ出しそうなゴミ箱に押し込んだ。
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