Suspicion-疑惑 -《第三話 B》
救急車で運ばれた姉は、救命治療室(ICU)にそのまま運ばれた。
医師や看護師がバタバタと姉を救うために動き回っている。俺は、ICUの隣にある待合室で家族の到着を待っていた。
「あの男が撃ったに違いない……」
るくすの感情があらぶっていた。
USBを手に入れた男は、るくすと別れた後、護衛の男達と車に乗り込み車を走らせようとした時に、後方から乾いた「パン!」という音を聞いていた。
男は一瞬、自分が狙われたかと思い座席に伏せたが、るくすの姉が単車から転げ落ちたのを見て、即時にその場から離れろと運転手に告げていた。
一方、るくすの姉はICUで薄れていく意識の中で、背中に熱く重い痛みを感じながら、どこからか聞こえてくる声に耳を傾けていた。
「わたしは、どうしたんだろう?」
看護師の声の奥から、違った声が私の意識に入ってくる。初めは、小さかった声が、意識が遠のいていくにつれ……大きくなって来た。
謎の声「まだダメなのか?」
意識が飛ぶにつれて、謎の声が鮮明になってきた。
姉「まだダメって……どういうこと?」「わたし……このまま死ぬの?」「そういえば、背中の痛みもなくなっている……」
謎の声「これでダメなら諦めるしかないよね」
姉の意識が完全になくなった……。
姉:天本みえる 19歳 現役の大学生
筆者 るくすすん